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創業100周年を支えるリーダーシップ論/ヤマトHD・木川眞会長

投稿日:2019年3月11日

大切なのは「挑戦力」「決断力」「危機対応力」「発信力」

座右の銘は「為さざるの罪」。ヤマトホールディングス木川眞会長=写真=が「ヤマトグループのイノベーションと私のリーダーシップ論」をテーマに、第8回アクセスロジスティクス会(3月8日/TKPガーデンシティ品川)で講演。経営者として大切にしているのは「挑戦力」「決断力」「危機対応力」「発信力」。昭和48年に一橋大学商学部卒業後、富士銀行(現みずほ銀行)入行。そして、平成17年4月にヤマト運輸に入社。物流が大きく変化する中、どうイノベイトするのかを銀行時代を含め、およそ20年を振り返りながらリーダーシップ論を語った。

【挑戦力・決断力 ~次の100年に向けて成長戦略とインフラ企業としての社会的責任の両立~】
挑戦するには誰かがどこかでリスクをとる。リスクを伴う決断をして、全てが上手く行くわけではない。そういう危機が必ず起こる時の危機対応力。自分がやりたいことを社内外に発信し一緒に取り組む。ヤマトホールディングスは今年11月に100周年を迎え、次の100年に向けた成長戦略をどう描くのか。

まずヤマト運輸入社当時を振り返り、「ヤマトのカリスマ・小倉昌男さんが創り上げたビジネスモデルが1兆円企業に育て上げた。その枠組みの一部を壊さなければ次の成長戦略は描けない。小倉さんから直接薫陶を受けた方々を否定するようなことはできない」と、難しい舵取りだったことを明かした。

その中で4つの仮説を打ち立てた。①物流のボーダレス化②ECの急拡大、労働力の減少③デジタル技術の進化④社会的課題の顕在化・深刻化。木川会長は「ECの急拡大が想定外。東京オリンピック・パラリンピックで一気に顕在化した」と語り、一昨年、大きな話題となった〝宅配クライシス〟問題を説明した。

物流を取り巻く外部環境も大きく変化する。労働力減少(労働力不足)を背景にEC市場拡大、宅配便個数の増加。拡大が続く通販市場においてEC化率は5.79%。欧米との比較から2ケタに達するのは間違いない。その中での宅配便個数のコントロールが問題だった。現在、体制の再構築を進めており、もう一度その領域に対応しなければEC市場は支えていけない。

物流のボーダレス化が進み、政府は農林水産物・食品の輸出額1兆円を2019年の目標に掲げている。その荷物の一部を越境ECが支えることは必然であり、デジタル技術の進化も必要。技術革新がなければ物流は脱落する。地方の過疎化から先々は都市部の過疎化・高齢化が本格的に始まる。国会財政が厳しい中で、これら社会課題を民間がカバーすることが必要になる。

こうした背景を基に3つの事業戦略を描いた。「デリバリー事業の海外展開」「デジタル技術を活用した物流機能の進化」「地域密着型のサービス展開」。銀行時代から親交のあった経営コンサルタントからは軸足をどちらかに絞るように助言されたが、全ての成長戦略を進める決断をした。

デリバリー事業の海外展開とデジタル技術を活用した物流機能の進化を進めるための「バリュー・ネットワーキング構想」には約2400億円もの巨額投資を行った。国内初の路線便(1929年)と宅急便(76年)。これら2つのイノベーションに加え、第3のイノベーションと位置付ける。木川会長は「物流をコストではなく、価値を生み出す手段に進化させ、日本経済の成長戦略に資する物流の担い手に進化させる」と語る。

そして、地域密着型のサービス展開では「プロジェクトG」を8年前から推進。民間企業が公共サービスを代行する側面を持つ。見守りサービスや、鉄道・路線バスを活用した客貨混載。都市部での生活支援を多摩ステーションで開始するなど総案件数は959件。現在281案件が運用中で、こうした活動がCSVにつながる。

ただし、次の3つの条件も示したという。「本当に地元で必要なサービスであること」「サービスによって地元同業者を含めて企業と共生できること」「補助金を必要としないこと」。

【危機対応力 ~逃げない経営~】
「銀行時代を含めて数々の危機を経験してきた」と振り返った。銀行時代にバブル崩壊、相次ぐ大手金融機関の破綻、大蔵省・日銀接待疑惑、山一證券救済(失敗に終わる)、大手銀行への公的資金の注入、春日部支店殺人事件、大手銀行の統合、米国同時多発テロ、みずほ銀行の大規模システム障害などで対策本部など、それぞれの場面で先頭に立った。ヤマト入社後もサービス残業問題の摘発、東日本大震災、クール宅急便の不適切取り扱い、宅配クライシス、引越業務の不適切請求問題に直面した。

こうした経験を経て、危機管理ポイントに次の7つを挙げた。①経営トップが腹を括れるか②初動を間違えるとすべてが後手に回る③炎上の原因はトップ層の発言から④危機発生後は「危機対応マニュアル」を開かない⑤指揮権は一本化する(極力リモートを避ける)⑥メディア対応は隠さず、正確に⑦大胆な対応策が終息を早める。

【発信力 ~社員とのコミュニケーション~】
「良い会社・伸びる会社の条件は3つある」と語った。

①シッカリした経営理念~良き企業風土と意識の共有。②イキイキした社員~高い社員満足度、人材育成力。③ワクワクするような革新的戦略~絶えざる挑戦、実践力。

未来は「夢」×「デジタル技術」×「デザイン力」から生まれる。Yahooのある人の言葉に共感を得た。

これからの時代に求められる人材像は①世の中を常に好奇心を持ってみる目②多様な価値観を受け入れる柔軟性③ちょっとした変化を敏感に感じ取る感性④自分の思いを形にするデザイン力⑤恐れずチャレンジする意欲の5つ。ただ、全てを持ち合わせられる人材はなかなかいない。

木川会長は「為さざるの罪」を座右の銘に掲げこう語った。
「自分で真剣に考え、こうあるべきだと思ったら思い切って行動すべきだ。失敗を恐れて何もしないことは、果敢にチャンレンジして失敗することに較べて、ずっと罪なことだ」

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