国内工場の自然冷媒完了
味の素冷凍食品は3月31日をもって、国内全7工場のフリーザーに使用する冷凍機を脱フロン化し自然冷媒への転換を完了する。黒崎正吉社長=写真=は同2日に開いたオンライン会見で、これまでの取り組みについて説明した。
同社は業容拡大に向けたミッションの一つとして「より良い地球環境づくりへの貢献」があり、脱フロンを経営指針に掲げる。フロンは冷媒には効果的なガスだがオゾン層の破壊、地球温暖化の原因になり規制の対象となっている。国際的に先進国では特定フロンは2020年に生産終了、30年に使用中止。代替フロンは36年までに85%削減が義務付けられている。国内でも自然冷媒の導入が推進され、1988年「オゾン層保護法」、01年「フロン回収・破壊法」が制定された。
そこで同社も脱フロン化に向けた技術検討を開始し、06年に冷凍食品業界初の「フロン冷凍機の全廃と自然冷媒への転換」を宣言。20年度までに、自然冷媒に転換する長期計画を策定した。しかし自然冷媒の導入には、「高額な投資」「冷媒漏洩による環境リスク」「製品の安定供給の維持」が課題となった。00年当初、国内9工場47基保有していた冷凍機を全て自然冷媒に切り替える費用は、約140億円が見込まれていた。
そこで工場の建て替えやラインの集約、製造ラインの設備能力向上、シフト増(生産時間延長)などにより生産能力を増強。冷媒漏洩リスクには検知器や警報器、除害装置の完備などでアンモニアと二酸化炭素を併用した冷凍設備導入による危害のリスク低減。複数工場との連携で安定供給も図った。こうした取り組みが奏功し、最終的には7工場、冷凍機27基まで削減することに成功し投資額は約90億円に抑えることができ、自然冷媒の導入が実現した。
自然冷媒の転換は省エネにも寄与。冷凍機のマルチユニット化技術の構築(1台のフリーザーに対し複数の冷凍機を組み合わせ、負荷に応じて変動させることによる省エネ運転)、米飯フリーザーの庫内温度を段階的に下げることによる負荷変動抑制(電力25%削減)が図れた。地球温暖化低減として特定フロン総保有量約70t削減、CO2排出量換算で12万6700t(4万2000世帯分の年間CO2排出量に相当)を実現した。
黒崎社長はこれまでの取り組みを高く評価する一方、代替フロンによる冷凍冷蔵庫が一部あることが課題だと明かす。「代替フロンも30年までに全廃し、海外工場の脱フロン化も進める」と、自然冷媒への完全転換に並々ならぬ決意を示した。
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