近畿地区の現況を語る
イオングループは12月1日、防疫対策などをはじめとする近畿圏での取り組み概要を、関西流通記者会に向けオンラインで発表。ダイエー・近澤靖英代表取締役社長、光洋・平田炎代表取締役社長、イオンリテール・取締役専務執行役員土谷美津子近畿カンパニー支社長がそれぞれ説明した。
楽しみや驚きを提供/ダイエー
「届けたいのは安心」を掲げ、顧客の不安を払拭する安心な買い物の実現に取り組んでいる。
同社では全188店舗(10月末現在)中、近畿では111店舗を展開。今期は新規3出店に加え、改装を4店舗で実施した。店舗では感染防止対策を徹底した上で、料理の楽しみ、驚きや発見のある売り場、おいしさ・くつろぎの提供、健康商品の展開などの実現に注力する。
イオンフードスタイル西神中央店(神戸市)に、同社初となるベーカリーカフェ業態「ちょいゴチCAFE」を導入したのもその一環だ。一方で従来からのハイ&ロー販売を控え、頻度品200~300品目で月間奉仕する「安い値!」の展開を強化。
さらにデリカでは、節約志向の高まりに対応し、仕入先の見直しや製造工程の改良などで「価格破壊」に挑戦。5月から段階的に取り組み、11月の第4弾「絶品!肉の旨味メンチカツ」は、138円の売価を98円で販売し、前年比4.6倍の売り上げを達成した。
非対面・非接触のニーズに対応するネットスーパーも強化。2022年度までの3年間で、現状の2.5倍となる70店舗での展開を目指す。デリカの出前や健康管理アプリとの連携、店頭・ドライブスルーでの受け取りなど関連サービスも拡充する。
昨年から導入を開始した牛肉のスキンパック包装は、対象品目を拡大しながら全店で実施。水産品でも実験展開を始めている。また、今年9月からは島根漁港の新鮮な魚を一艘買いする「島根のお魚市」を45店舗で展開している。
新本社で働き方変化/光洋
外食店の疲弊に連動し、各地の生産者が苦境に立たされていることから、イオンリテール、ダイエーとの3社協同企画として展開する「絆市」に注力。5月から同社81店舗を含む3社計275店舗で、和歌山や鹿児島、四国地区などの鮮魚を11月までの累計で9.5万尾販売した。農林水産省は「地域の創意による販売促進事業」として、インバウンドロスなどから需要減少や在庫滞留が生じている品目の生産・供給体制の維持を呼び掛け、これに呼応した取り組み。
なお、11月から本社をダイエー茨木プロセスセンターに移転。ダイエーと同一事務所とすることで連携強化を加速する。新本社には光洋、ダイエーからそれぞれ200人ずつの計400人が在籍するが、店舗やトレーニングセンターなどの施設を活用したサテライト方式を採用。
在宅勤務の継続もあり現状の本社人材稼働率は10~20%と、過密状態を回避している。こうした店舗の防疫対策に加え、新たな本社の在り方を模索し、安心・安全を提供する。
近畿発の除菌負担解消/イオンリテール近畿カンパニー
安心な買い物と職場の実現に向け、近畿カンパニーが全国に先駆けて取り組んだのが買い物カゴの自動除菌装置「ジョキンザウルス」の開発だ。
店舗のレジ担当者が声を上げたことが始まりだった。働き方改善などに利用する組合ポストに投函されたのは「カゴ拭きが大変」「食品レジは何でも屋ではない」として、他部署からの作業応援を求める辛辣な要望。土谷支社長が京都府の山下晃正副知事と懇談した際、買物カゴの除菌作業が従業員の大きな負担であることを伝えたところ、京都のモノづくり企業による、試作に特化したソリューション提供サービスの専門サイト・京都試作ネットを紹介された。
機械設計とプロジェクトマネジメントに強みのあるニューネクスト社をリーダーに、試作ネット15社と近畿カンパニーによる自動除菌装置の開発が5月からスタート。まとめて一括除菌は難しく、カゴ一つずつを除菌すること、除菌は取っ手部分と持ち上げる際によくつかむ部分を集中的に除菌すること…。きめ細かな対策を練りつつも、制作開始から4カ月のスピードで試作機が完成。ウイルス除去率99・97%の実績を得て9月29日、イオンスタイル京都桂川でお披露目会を行った。年内には近畿地区のイオンスタイル・野田阪神、橿原、伊丹昆陽などの各店を含め、全国13店舗に導入する。
また、絆市やネットスーパーの展開にも注力。ネットスーパーでは、重たい、あるいはかさばる商品だけでなく、生鮮やデリカが売れる。さらに糖質オフなどの健康系ビール類が売れるなど、店頭とは異なる商品動向が見られるという。
2020年12月14日付