メーカー吸収も視野に
大手量販店が2月期中間決算を発表、下期の施策を明らかにした。その取り組みは、ネットスーパーやデジタル事業の強化、店舗改装など多岐にわたるが、食品業界に大きく関わるのはPB展開などの商品施策だ。消費はデフレ傾向とされるが、各社とも二極化が進むとして〝独自色〟の訴求に乗り出している。
小売業からは「値下げ」「価格凍結」など、多方面からの値上げ要請に抗う声が相次ぐ。原料事情を見れば対応すべきだが、価格改定の一番乗りは避けたいのが本音。とはいえ値上げと消費者の価格志向の間で揺れているのも事実だ。
イオンリテールの店頭を見ると、鍋つゆの催事コーナーは「トップバリュ」中心であることが分かる。寄せ鍋やキムチ鍋など定番品はPBで固め、それ以外のメニューはNB品も置く。こうした売り場を見ると、価格対応のためのPB強化がより加速しているように映る。
一方でイオングループは、当面は内食需要が続くことを見越し、家庭でプロの味が楽しめる「トップバリュ プロのひと品」28品目を10月11日から新発売。和洋中のプロが監修したもので、今期中に50品目まで拡大する。さらにオリジナル性の高いレギュラートップバリュの発売を年明けに予定。PBの課題である独自色の訴求に乗り出す。
ライフコーポレーションは、スマイルライフなどのPBを月間・週間で特売する。一方で自然派商品・ビオラルは、専門店の出店と既存店でのコーナー化で事業規模100億円を目指す。今月にはJR大阪駅ビルのエキマルシェ大阪に出店を予定。また加工センターの製造機能を生かした商品展開も独自性の訴求にひと役買っている。
第5波のような大きな揺り戻しはなく、一進一退の繰り返しが予想される中、需要の両極の確保に向けたPB戦略。ニーズに対応するほどに、小売業はメーカー機能が必要となってくる。製造小売業への進化を視野に、メーカーを吸収する動きも想定される。製造委託先の取り合いも熾烈化する。
2021年10月18日付