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食品輸出に必要なことは/関西広域連合

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日本酒や野菜の成功事例を紹介

大阪市内で食品輸出セミナーを開催

近畿2府4県に鳥取県、徳島県を含めた関西広域連合は2月7日、食品輸出セミナーを大阪市内で開催し230人超が参加した。関西近隣の魅力的な食品を輸出することを目的に、講師には各種分野の先駆者を招き情報提供が行われた。

開会に際し、関西広域連合広域産業振興局の原康雄農林水産部長が「海外マーケットは戦略カテゴリー。日本の食文化を守るためにも重要」と挨拶。農産物関連では九州農産物通商の波多江淳治上席執行役員が講演。同社は福岡県の肝いりで県の農産物を世界に売り込むために発足。現在では年間を通じて商売を行うためオールジャパン体制で海外における農産物の販路開拓を目指す。

波多江氏は「単一県での輸出拡大には限界がある」と強調し、輸出拡大には流通コストの低減が大きな課題であることを説明した。航空便と船便の合理的活用、積載率の向上、横持ち運賃の低減等を図るため、複数県での連携を強める必要がある。また、商品力強化、取引先との信頼関係構築も課題に挙げ、複数アイテムによる商品提案力強化、共同プロモーションによる販促費削減、情報の共有化による課題解決等の必要性。最適な輸送拠点(空港・港)を決め、年間での供給体制を整え、提案力拡大のために農産物以外の加工品の取り扱いも拡げるべきとした。

また、「現地ニーズを捉えることも肝要」と指摘する。味の嗜好や食習慣の把握を失念してはならない。例えば香港は外食が多く果物類を多く消費する。甘い物や柔らかい物を好むが、酸味のある物は敬遠される。飽きやすい点もあるため商品の鮮度感も究める必要がある。対してタイ王国はブランド志向が強く、甘味・酸味・辛味を好むが薄味や塩辛い味は不得手。店頭では棚代を徴収し、売れ残りリスクは輸入業者が負担する商習慣もある。こうしたニーズの把握に加えて、賞味期限は半年以上持つものが提案しやすい。

留意点としては初期投資が必要である点、輸出先の規制措置(残留農薬や放射能物質、食品添加物等)の確認を列挙。福岡県ではイチゴの「あまおう」で農薬残留基準に対応した産地作りも推進している。課題は多いが地域農業の振興や生産農家の所得確保等につながるため、農産物輸入の拡大が必要との考えだ。

日本酒関連では南部美人の久慈浩介社長が熱意溢れる講演を展開。同社は1990年代と早くから輸出の重要性に着目。日本各地の若い蔵元を集め日本酒輸出協会を立ち上げ、世界で日本酒を広める活動にも取り組んでいる。

同社の日本酒は17年度には世界最大規模のワインコンペティション「IWC」のSAKE部門で最高賞に当たる「チャンピオン・サケ」を受賞。唯一の日本酒限定大会である「サケコンペティション」ではスパークリング部門で17年と18年の2年連続で第1位、純米大吟醸は18年に第1位の栄冠に輝いた。久慈社長は「世界的な賞への挑戦は販路開拓の強みになる」と語る一方、「国内で苦戦しているから輸出で起死回生を狙おうという考えは厳しい。志を売りに行く気概が欲しい」と警鐘も鳴らす。

また、海外へのプロモーションの例としてセミナー開催の必要性を挙げた。日本人は味や価格が商品選択の最優先事項だが海外は異なる。歴史や製造方法、料理との相性など頭から入る文化がある。そして、試飲につなげると商談もスムーズ。日本での常識を取り払うことも必要で、料理との相性ではアメリカはラーメンに日本酒を合わせる飲み方も流行っている。

久慈社長は「日本の伝統産業等のオンリーワン商品は世界で戦える」と熱を込めて語り、「会社の規模の大小ではなく価値の大小を世界は見ている」と論じた。

サービス面ではオイシックス・ラ・大地の高橋大就執行役員が講演。同社は農産物の宅配サービス等を展開する3社(オイシックス・らでぃっしゅぼーや・大地を守る会)が昨年経営統合してできた会社。ネット受注を強みに商品選びではフレキシブルサブスクリプションを採用し、欲しいもののセットアップで好評。最近では野菜のセットとレシピが付いたミールキットを訴求し、主婦が抱えるペインである毎日の献立を考える手間を省く提案を進めている。

また、同社は海外事業も展開。中国の香港や上海でビジネスを展開。日本の野菜を届ける取り組みでスタートしたが、近年では日本で培ったノウハウを活かし、現地の農家から野菜を仕入れて販売するビジネスも行う。つまりビジネスモデルを輸出した訳で、高橋執行役員は「日本のサービスは優れており、海外のECなどと連動させれば圧倒的に稼げる」と期待を語った。日本の営農指導等の輸出もまだまだチャンスが大きいという。

さらに知的財産の輸出も大きなビジネスにつながるため取り組むべきと論じたが、知的財産を保護するために国に頼るだけでは無く、個人でもしっかりと対策を取る必要性があると強調した。

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