圧倒的〝鮮度〟打ち出す
伊藤忠食品が、リキッドフリーザー方式凍結機「凍眠」の製造・販売を行うテクニカンと立ち上げた冷凍食品ブランド「凍眠市場」の販路拡大を加速させる。昨年11月にはデジタルギフトでの取り扱いを開始、今年2月にはテクニカンが運営する冷凍食品専門店「TOMIN FROZEN(トーミン・フローズン)」(横浜市)で販売を開始。今後は百貨店、質販店への導入拡大も進める考えだ。精肉、鮮魚を中心に解凍後も「とれたて・出来立て」のおいしさを提供する、一般冷凍食品とは一線を画す圧倒的な〝鮮度〟訴求を仕掛ける。
伊藤忠食品が、テクニカンの「凍眠」技術に出会ったのは約4年前。冷気にさらすのではなく、マイナス30度のアルコール液に浸けることで一般的な冷凍の約20倍の速さで凍結する。凍結速度が速く氷結晶が極小化され細胞に傷がつかないため、解凍時にドリップがほとんど発生せず驚きの鮮度を維持する。
営業企画本部低温開発部惣菜課の富永進一朗課長補佐は、その技術を目の当たりにしたとき、肉、魚が解凍前と全く同じ状態だったことに「衝撃を受けた」と振り返る。富永氏はすぐさまテクニカンの山田義夫社長へ連絡し自社展示会への出展を打診。出展が叶った展示会は大きな反響を得ることになった。2019年に両社は業務提携し、「凍眠」で凍らせた商品の流通を拡大するためのブランド「凍眠市場」が誕生した。
山田社長が「凍眠」を開発したのは約40年前。主に食肉業界で活躍してきたが、今では魚、野菜、総菜、弁当、日本酒など幅広いカテゴリーの食品メーカーに機器を販売している。また「凍眠」は鮮度維持だけでなく、生鮮食材の安定供給、短時間冷凍による作業の効率化、さらには食品ロス削減が期待でき、山田社長は「食品、物流業界に大きな変化をもたらすことができる技術だ」と胸を張る。
「凍眠市場」は約100種類をラインアップ。昨年から展開するデジタルギフトでは山形牛、博多地鶏など約30種類を取り扱い、順調な滑り出し。「TOMIN FROZEN」では約70種類が並び、一番人気の「四種のお造り」など、すでにリピーターもついている。産地や店舗でしか食べられなかった「三陸産お刺身用さば」「青森県産アップルポークの生姜焼き重」も、「凍眠」の技術で「とれたて・出来立て」が味わえる。
今後「凍眠市場」は百貨店、質販店、ECなどを中心に販路拡大を目指している。一方で富永氏は、一般冷凍食品との違いをいかに世に伝えていくかが課題と話す。「食べてもらえば、鮮度の良さは実感してもらえる」と品質には絶対の自信を持つが、まずは食べてもらうためのアプローチ策を模索し、ブランド認知向上を図る考えだ。
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