水産品とソフリ増産へ
気仙沼工場
ヤヨイサンフーズが80億円を投じ、2017年４月から着工していた気仙沼工場が竣工した。水産加工品、水産カツ、介護食品「ソフリ」の主力工場として各１ライン、合計３ラインを有し、11月１日から事業を開始している。12月８日に報道陣に公開し、併せて来春の新商品も発表した。
同社は2011年３月11日の東日本大震災で旧気仙沼工場が倒壊。生産面に大きなダメージを受けたが、同年８月に九州第二工場を増設（水産カツ、ソフリ）、11月に気仙沼松川工場（水産加工品）を新設し旧工場の商品を振り分けて製造を続けた。しかし1954年の旧工場建設以来、気仙沼は同社にとって思い入れが強い場所。気仙沼での工場再建は、全社員にとっての悲願だった。
新工場には最新設備を導入し、生産性向上を図る。水産加工品ラインには、旧工場から受け継ぐ「焼き魚」「煮魚」を中心に、独自製法で骨までふっくらと仕上げる。生産能力は、毎時１ｔで松川工場の２倍。水産カツラインには、地元で水揚げされた原材料も使い、エビやカジキマグロ、サケなどをフライに加工する。生産能力は毎時1.3ｔで、九州工場の1.3倍。ソフリラインは、九州工場のバッチ生産方式に対し、連続生産方式を採用し効率性がアップ。生産能力は毎時１ｔと、これまでの２倍になった。雇用においても旧工場から九州工場などに異動した従業員の内、29人を帰郷異動させた。
セキュリティーにおいては製造現場への入場は目の網膜スキャンによる「虹彩認識システム」を採用し、95台の安全安心カメラを設置。フードディフェンスの観点から、作業着の自社洗濯設備も完備する。全照明がＬＥＤ、原料冷蔵庫、製品保管庫、バッチ凍結庫や各フリーザーは全て自然冷媒で環境にも配慮する。
新工場竣工に合わせ商品ラインアップも拡充。来春に向け新商品・リニューアル品計71品を12月から順次発売。重点施策として「気仙沼工場を中心とした商品ラインアップ」「健康・人手不足対応など継続重点テーマへの注力」「コロナ禍における影響を意識した新商品開発」の３点で開発を進めた。
新工場には加熱水蒸気ロースターを導入し、焼き魚の品質が上がった。新商品の電子レンジ調理できる「レンジでサカナ」シリーズは、「さばの塩焼き」など魚の切り身がトレーに入ったフローズンチルド商品で量販店の総菜・鮮魚売り場を狙う。自然解凍商品も充実し産業給食向けに焼き魚・煮魚の「そのまま解凍」シリーズを発売する。
水産カツでは、エビと独自配合のつなぎで食感が良くなった「本格海老カツ」。自社でカットした原料、コーティング処理で繊維感・ジューシー感が高まった「海の幸ふっくらカツ」シリーズ。ソフリはカット不要で作業性が上がる「小型素材ムース」（牛肉、豚肉、鶏肉、タラ、鮭）を発売する。
人手不足が深刻な小規模施設向けには、簡便オペレーションの「ほほえみ厨房」シリーズから「やわらか焼肉丼の具」。注目が高まる大豆ミートを使用した「イートベジ」シリーズからは「大豆ミートの厚切りハムカツ」「大豆ミート入りもちっと水餃子」を発売。
量販店の総菜売り場向けコロッケ、ミンチカツは多様化するニーズに対応。コロナでバラ売りがなくなり、「あげ玉衣の梅しそ包みメンチカツ」などパック販売用を拡充した。生活者の収入減少の懸念に対し、コストと値頃感を重視したボリュームタイプ「（袋）あさりと徳島県産菜の花入りクリーミィコロッケ」と、健康意識の高まりで免疫力に着目した、シールド乳酸菌入り「（袋）駿河湾産桜海老入りクリーミィコロッケ」などを発売する。
会見で黒本聡社長＝写真＝は今期の営業概況を踏まえつつ、今後の取り組みを説明。４～11月の売上高は231億1200万円（前年同期比94％）。業務用メーカーの同社にとって、コロナは業績に大きな影響を与えた。しかし新たな傾向として学校給食では加工度が高い冷凍食品の需要が高まり、量販店ではパスタ、グラタンなど個食対応商品の引き合いが強まっている。宅配事業、ＥＣなど新規分野の開拓も進み、９月以降は前年を上回り推移している。
新工場が完成し商品力が高まり、年初からのコスト構造の見直しにも手応えを示す。「新工場という明るい話題の下、水産品、介護食の生産性を上げ、全社を挙げて収益性向上を目指す」と力強く語った。
〈気仙沼工場の概要〉
所在地＝宮城県気仙沼市赤岩港168-1▽敷地面積１万9999㎡（6050坪）▽建築面積7413㎡（2243坪）▽延床面積１万2140㎡（3672坪）▽鉄骨造生産保管能力1600ｔ▽原料保管能力750ｔ▽生産能力・日産23ｔ／年間6400ｔ▽従業員数163人。
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