THE FOOD WEEKLY

Pickup イベント・講演 健康・栄養

「香り」が食のおいしさや健康を左右する/食生活研究会

投稿日:

第34回「食と健康」講演会を開催

公益財団法人食生活研究会は9月3日、都内で第34回「食と健康」講演会を開催し、オンラインでも配信した。今回は「食」を科学的な視点から捉え、食品の風味を構成する香りと、香りを受け取る脳の働きに焦点を当てた。

開会にあたり、正田修理事長があいさつ。同研究会の概要と取り組みを説明した。

開会挨拶する正田修理事長

同研究会は1941年に発足し、「健康で豊かな食生活等の向上に貢献する」との理念のもと、食料、食生活、食文化に関する研究者・研究機関への助成、講演会の開催、講演会記録誌などの刊行に加え、海外からの留学生や海外への留学生に対する支援などを行っている。2013年の公益法人化を機に海外からの留学生支援を開始し、2023年度からは海外への留学生支援にも取り組んでいる。

食品の「おいしさ」を香りから読み解く
第1部の研究報告では、工学院大学先進工学部応用化学科の飯島陽子教授が「食品の嗜好性を決める風味要因のフレーバーオミクスによる解明と調理効果の検証」をテーマに講演した。
飯島教授の研究室では、食品の品質評価やメタボロミクス、香気分析、フレーバーオミクスなどを組み合わせ、食品の「個性」を科学的に捉える研究を進めている。

工学院大学先進工学部応用科学科 飯島陽子氏

講演ではまず、食品の風味について、味だけでなく香りが大きな役割を果たしていることを説明。香気成分を網羅的に分析することで、官能評価で感じられる「おいしさ」や特徴と、どの成分が関係しているのかを探る研究手法を紹介した。
具体例として取り上げたのがトマトジュース。市販品を分析し、香気成分の組成データと官能評価データを照合することで、成分組成と「香りの強さ」などの評価項目を結び付ける研究を示した。さらに、ストレートジュースと濃縮還元ジュースでは香気成分に違いが生じ、製造工程が風味の違いに関与することも説明した。
調理加工による変化については、みそ汁を例に、加熱時間に伴う香気成分の変化を分析。加熱によってメイラード反応、カラメル化、脂質加熱酸化などが起こり、そこからさまざまな香気成分が生成されるとした。一方で、加熱によってすべての香りが良くなるわけではなく、成分のバランスを個別に捉えることが重要になるという。

香りは「脳」と結び付き、健康やウェルビーイングにも
第2部では、東京大学大学院農学生命科学研究科教授で研究科長・農学部長を務める東原和成氏が「香り・脳・健康―食ウェルビーイングの科学」と題して講演した。
東原氏は専門とする嗅覚研究について、香りを感じる仕組みから脳内での情報処理までを幅広く解説。人間には約400種類の嗅覚受容体があり、数多くの香り物質を受容体の組み合わせによって識別していることなどを紹介した。

東京大学大学院農学生命科学研究科長・農学部長 東原 和成氏

さらに、香りは単に「においを感じる」だけではなく、脳内の情報処理を通じて、記憶や感情、行動とも結び付くと説明。香りに対する反応には個人差があり、同じ香りでも経験や言葉、環境などによって受け止め方が変わることにも触れた。
講演資料では、香りの反応を可視化・予測する研究や、香りに対する意味記憶・価値を測定する研究も紹介。香りを利用したリラックス、リフレッシュ、集中、気分の切り替えなどへの応用可能性を示したほか、将来的には食品や生活、医療などさまざまな領域で「香りのサービス」が広がる可能性を示唆した。
東原氏は、香りを含めた五感の働きを健康やウェルビーイングにつなげる視点を提示。食においても、味覚だけでなく香りや脳の働きを含めて「おいしさ」を捉えることが、今後の研究・商品開発につながることを印象付けた。講演会のテーマである「食と健康」を、食品科学と生命科学の双方から考える機会となった。

海外留学生7人を紹介
講演会終了後には、食生活研究会が支援する2026年度海外からの留学生8人のうち、来日済みの7人を紹介した。
今回紹介されたのは、ベトナム、台湾、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、米国、ポーランドからの留学生。残る1人は9月末に来日する予定となっている。
同研究会は、研究助成や講演会を通じて食生活に関する研究を支援するとともに、海外との学術交流、人材育成にも取り組んでいる。今回の講演会も、食を「おいしさ」だけでなく、健康、脳、感覚、ウェルビーイングまで広げて考える場となった。

WEB先行記事

-Pickup, イベント・講演, 健康・栄養

Copyright© フードウイークリーWEB|週刊食品 , 2026 All Rights Reserved Powered by STINGER.