麹菌をファルコン9で打ち上げ 帰還後に“宇宙醤油”を仕込む


醤油醸造に使用する麹菌が宇宙へ行くのは世界初の試み(2026年4月15日時点湯浅醬油調べ)
その一滴は、地球を飛び出す。
和歌山・湯浅の老舗、湯浅醤油と宇宙スタートアップのIDDKが、世界初となる「宇宙醤油」醸造に向けた実証実験を開始した。日本の発酵文化を支えてきた麹菌を宇宙へ送り、帰還後に実際の醤油づくりへとつなげる、前例のない挑戦だ。
計画では2026年秋、麹菌を搭載したサンプルを米宇宙企業 SpaceX のロケット「ファルコン9」で打ち上げる。麹菌は人工衛星上で約2週間、微小重力などの宇宙環境にさらされた後、地球へ帰還。その後、湯浅醤油がこの“宇宙帰還菌”を使って実際に醤油を仕込み、地上の麹との違いを比較検証する。

打ち上げ筐体の写真
香りや酵素の働き、発酵のスピード――。
宇宙という極限環境が、発酵にどのような変化をもたらすのか。その答えを、伝統の木桶仕込みで探る。
舞台は、醤油発祥の地として知られる和歌山県湯浅町。
その歴史はおよそ800年前にさかのぼる。中国から伝わった金山寺味噌の製法の中で生まれた「たまり」が、やがて醤油へと発展したとされる。荒海を越えて新しい食文化を持ち帰った当時の人々の挑戦は、現代でいえば“宇宙を目指す”ことにも重なる。
今回の「宇宙醸造」もまた、小さな一歩から始まる。
まずは麹菌を宇宙へ送り、その変化を持ち帰る。そして地上で仕込み、比較し、味わう――。この積み重ねが、未来の食文化へとつながっていく。
プロジェクトは段階的に進む。
打ち上げ、帰還、菌の解析を経て、実際の醤油づくりへ。最終的には、宇宙を経験した麹菌で仕込んだ醤油を“限定商品”として販売する構想もある。
技術面を支えるのは、宇宙バイオ実験を手がけるIDDKだ。
同社は打ち上げから回収までを一括で担う宇宙実験プラットフォームを展開し、伝統産業でも宇宙を活用できる環境づくりを進めている。今回の取り組みは、その実装第一歩ともいえる。
なぜ、醤油屋が宇宙を目指すのか。
その答えは、未来にある。
人類が月や火星で暮らす時代が訪れたとき、食はどうなるのか。
その食卓に、「故郷の味」は存在するのか。
800年前、海を越えた挑戦が日本の食文化を形づくったように。
いま、湯浅から宇宙へ向かうこの一滴が、次の時代の食文化の原点になるかもしれない。

湯浅醤油
■株式会社IDDK
2017年設立の日本発・宇宙バイオ実験×顕微観察技術の先端企業。
独自の「レンズレス顕微観察技術(MID:Micro Imaging Device)」を核に、宇宙バイオ実験プラットフォームの開発を進めている。
HP:https://iddk.co.jp/app-def/S-102/iddk_wp/
■湯浅醤油有限会社
明治14年(1881年)に創業した老舗の醸造元『丸新本家』の醤油部門。「世界一の醤油づくりを目指して」昔ながらの木桶を使って醸造。
HP: https://www.yuasasyouyu.co.jp/
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