THE FOOD WEEKLY

Pickup 油脂

共創で提供価値拡大/日清オイリオグループ

投稿日:

最新研究開発拠点を公開

新設されたインキュベーションスクエアB棟

佐藤将祐常務

日清オイリオグループは6月4日、横浜磯子事業場内に置く研究開発拠点「インキュベーションスクエア」に新設したB棟を報道陣に公開した。

中期経営計画Value Up+、さらにはその先のビジョン2030達成に向けて、技術開発の中核拠点「インキュベーションスクエア」が価値創造実現の場として5月から稼働した。技術本部長の佐藤将祐常務執行役員は、多様なユーザーとの〝共創〟を通じて、マーケティング×研究・開発による提供価値を拡大していく考えを語った。様々な油種の調合と精製技術・加工技術による油脂の改質、油脂を究めた同社の強みに、油脂以外の素材を組み合わせたソリューション提案を支える技術開発の最重要拠点となる。

パイロットスケール

ユーザー商品の品質改善、生産性向上、環境対応、持続的な供給への対処。様々なユーザーベネフィットを生み出していく。その一例として紹介されたのは、分別技術の高度化によるパーム油加工技術の深化。パーム油(融点35℃)は融点の異なる複数の油脂成分で構成され、チョコレート用途に適した油脂成分(PMF/パームミッドフラクション:融点29℃)を取り出すには、油脂結晶を高度に制御する技術が必要となる。この新たな技術を用い、マレーシアのISF社ではチョコレート用油脂増産に向けて設備導入が進む。その技術がインキュベーションスクエアB棟内のパイロットプラントで再現されている。

インキュベーションスクエアでは、実現力、油脂試作スケールアップ力、油脂製造フレキシビリティ、ユーザーとの共創力の強化が可能となる。そして、合成実験室、製剤実験室、培養実験室、恒温恒湿室、テストキッチン、分析評価室といった豊富で優れた機能がユーザーの課題解決につながる。

MCT酸化で風味向上

揚げ物がどのように変化するのかも目視できる

また、植物油脂によるおいしさの意図的創発を目指し、東北大学と共同研究を進めた「おいしさを生み出す香り成分」について、技術本部基礎研究所第2課の青柳寛司課長が解説した。

「油で食品がなぜおいしくなるのか」を徹底追及し、そのメカニズムの把握とコントロールを実現した。油脂を加熱すると脂肪酸が酸化され香り成分が生じる。そこで中鎖脂肪酸油(MCT)を酸化することで、乳製品や牛肉の香り成分を創り出せるのかという仮説を打ち立て検証を進めた。

様々な鎖長のMCTを最適な加熱条件で検証し生成した成分を分析したところ、MCTの加熱酸化により乳製品や牛肉等の動物性食品のおいしさを司る香り成分が生成された。実際にMCTの酸化を利用した植物性乳風味油を開発しラクトアイスを試作、官能評価を行った。結果は10人のパネラー全員が開発品の方が乳風味を強いと回答。植物油脂・MCTの酸化を利用することで、乳風味が再現できることが実証され、乳脂肪代替として使えることが分かった。

この技術を活用することで、乳原材料を削減、飲料(例えばコーヒー飲料)やプラントベースフードへの展開を可能にする。油脂の酸化をコントロールすれば、ユーザーの求める風味の実現にもつながる。

WEB先行記事

-Pickup, 油脂

Copyright© フードウイークリーWEB|週刊食品 , 2024 All Rights Reserved Powered by STINGER.