生産効率は計画の約30倍、燃料費削減も
地域資源を生かす新たな養鰻モデルへ
浜松市で、ちょっと意外な組み合わせのウナギ養殖が進んでいる。下水処理場で発生する「余った熱」を利用して、ウナギを育てる取り組みだ。
浜松ウォーターシンフォニー(HWS)は、浜松市の西遠浄化センターで進めてきた「温水かけ流し式陸上養鰻」の実証試験で、当初計画を大きく上回る成果を確認した。余った熱を使うことで、養殖に必要な燃料を減らしながら、ウナギを高い密度で育てられる見通しが立った。
●下水処理場の「余った熱」をウナギに
今回のポイントは、下水処理場で発生する熱を無駄にしないことだ。
西遠浄化センターでは、下水を処理する過程で汚泥を焼却している。その際に発生する熱の一部は、これまで十分に活用されていなかった。そこで、この「余った熱」を使って水を温め、ウナギの養殖に利用する。一般的な養鰻では、ウナギが育ちやすい温度を保つために燃料を使って水を加温する。今回の方法なら、下水処理場の熱を利用できるため、加温用の重油を使わずに済む見込みだ。
●ウナギを6倍の密度で飼育
実証試験では、ウナギを育てる水槽の「養殖密度」を当初計画の6倍となる18%まで高められる見通しとなった。養殖密度とは、簡単に言えば「同じ大きさの水槽で、どれだけ多くの魚を育てられるか」という数字だ。一般的な加温ハウス養殖では、養殖密度は1~3%程度。今回の取り組みでは、それを大きく上回る高密度飼育を目指す。
さらに、水槽の水を入れ替える量も大幅に減らした。当初は水質を保つため、1時間に1回、水槽の水をすべて入れ替える必要があると考えていた。しかし、水質管理などを工夫することで、1日5回程度の入れ替えで運用できることを確認した。これにより、限られた熱エネルギーでも、当初予定していた約5倍の規模の水槽を運用できる見込みだ。
●生産効率は約30倍、コストも2割削減へ
こうした工夫の結果、生産効率は当初計画の約30倍を達成した。また、シラスウナギの購入費を除く養殖コストは、従来のタンク式の陸上養殖と比べて約15~20%削減できる見通しとなった。
理由の一つは、加温用の重油を使わなくて済むこと。
もう一つが「温水かけ流し式」という仕組みだ。水を大規模なろ過・循環設備で繰り返し使う方式ではなく、温めた水を流しながら使うことで、設備や電気代などを抑えられるという。
●浜松のウナギ産業にもつながる可能性
今回の実証は、2025年からHWS、浜松市、浜名湖養魚漁業協同組合の3者が連携して進めてきた。

8月20日に浜松市西遠浄化センター(静岡県浜松市中央区)で行われた成果報告会には、中野祐介浜松市長をはじめ、地元の養鰻業者やウナギ料理関係者らが参加。報告会後には、実際にこの施設で育てたウナギの試食も行われた。

今後は2027年3月までに、今回の結果を詳しく分析し、設備や費用などを調べる事業性調査を行う。その結果を踏まえ、実際の規模に近い設備での実証試験を目指す。
将来的には、浜松市内の平均的な養鰻家1軒分に近い、年間約90トンの生産を目標としている。さらに、実用化できれば、西遠浄化センターの汚泥焼却炉から出る熱を利用することで、年間約3,500トンのCO2削減につながる可能性もある。
「下水処理場の熱」と「浜松のウナギ」。
一見すると関係のなさそうな2つを結び付けることで、捨てられていたエネルギーを地域産業に生かす。浜松の名産品を守りながら、環境負荷も減らす――。今回の取り組みは、地域の資源を地域で循環させる新しい養鰻の形として注目されそうだ。
※「日本初」は、余剰熱を利用し、使用後の水を下水処理場で処分する方式を指す。
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