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うま味調味料(MSG)の安全性を強調。そして風評を無くす/味の素

投稿日:2019年7月22日

専門家が思想を変えることの難しさも指摘

味の素は、7月19日に東京會舘丸の内本館でメディア懇談会を開催。「~なぜフェイクニュースは消えないのか?~うま味調味料(MSG)の安全性と風評について」をテーマに、各分野の専門家を集めパネルディスカッションを行った。

味の素 西井社長

開催冒頭、西井孝明社長が「フェイクニュースと戦い、真に豊かな社会の創造を目指して」と題し、同テーマで4月に開催した懇談会を振り返りつつ、今回の開催について狙いを解説。MSGを取り巻く環境の変化と風評、安全性を立証してきた歴史、そして健康で豊かな社会に貢献できる存在としての役割。さらに現在、消費者庁が「食品添加物表示制度に関する検討会」を始めたこと。食の正しい情報を発信することの重要性を丁寧に示した。

パネルディスカッションは、ジャーナリストでメディアコンサルタント・メディアコラボ代表の古田大輔氏をモデレーターに、次の4人のパネリストが登壇。薬学博士で実践女子大学名誉教授、国立医薬品食品衛生研究所、食品添加物指定相談センターのセンター長を務める西島基弘氏。工学博士で明治大学大学院長、情報コミュニケーション学部教授の石川幹人氏。医学博士、管理栄養士、公認スポーツ栄養士の資格を持つ一般社団法人日本スポーツ栄養協会理事長の鈴木志保子氏。そして、味の素広報部サイエンスコミュニケーショングループ長の高取幸子氏。

このメンバーにより、MSGの現状、風評が残る理由、正しい情報が正しく伝達されるために等をテーマに議論を展開。西島氏は消費者が食品添加物に対する誤ったイメージを否定しつつ、中高の学校教育、メディアのあり方について強く提言。一方、鈴木氏は人間の思想的側面を変えるのは難しいことを指摘しつつ、立場上は正しい情報を発信し続ける姿勢を強調した。また、石川氏はSNSを中心に現代社会の情報伝達のスピードが速く、正しいことも誤った情報も制御が難しい点を指摘。

古田氏自身も正しい情報には理解は示しつつも、「昨夜はオーガニックレストランで食事をした」と語り会場を沸かせたほか、メディアの立場として「この問題を正しく伝えるのは500字程度の記事では難しい。1万字は必要」とし、メディアの現状の編集体制に理解を示しながら全体の議論をまとめた。

西井社長は現在の市場で「無添加」を訴求する商品の多さが消費者に誤解を生み出すキッカケになっている点を指摘したが、この問題はMSGに限ったことではなく、考え方、モノの見方、思想や社会構造全体に複雑に絡み合うテーマという印象を強く感じさせる。同社がこの問題に対する風評を無くしたい想いが強まったことには理解できる。正しい情報を伝えることは必要だ。

しかし、一方でMSGは消費者にとって大企業である味の素が販売する。その大企業が誤解の払拭に強く動けば、この問題をより複雑に捉える一部の消費者が過熱することは当然想定済みのことだろう。それでも中立の立場、MSGの風評を考えもしていない消費者が圧倒的に多いと見られる現在において、MSGへの理解を深めることにつながるのであれば、安全性をアピールすることは大きいとの判断だろう。長年にわたってすり込まれたイメージを変えることは非常に難しい。だが同社はこの問題について今後も粘り強く訴えていく姿勢を見せ、次回開催を11月29日と予告した。今後の取り組みと消費者の変化には強い関心を抱かせるところだ。

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