TOBで経営戦略加速へ

京谷社長
三菱食品は、2025年3月期決算を5月8日に発表した。4期連続での増収増益ならびに最高益更新となった。同日、本社で決算説明会を開き、京谷裕社長が経営計画「MS Vision 2030」の進捗に加え、同日三菱商事から発表された公開買付に関しても言及した。
2025年3月期の業績は、売上高2兆1208億4700万円(前期比101.6%)、営業利益315億7500万円(106.9%)、経常利益333億800万円(106.1%)、親会社株主に帰属する当期純利益231億7400万円(102.6%)の増収増益。卸売事業の売上高増加と採算改善による売上総利益の増加(3.5%増)が、物流費や人件費等の販管費増加分(2.7%増)を上回り、各利益は4期連続で過去最高を更新した。
卸売事業(売上高1兆9001億円/1.2%増、経常利益284億円/9.0%増)は、コンビニやディスカウントストアとの取引(主に低温食品)が堅調に推移し売上高が伸長。利益面では増収に加え採算改善による粗利の増加でコスト上昇分を吸収した。また、ブランド開発事業(売上高329億円/1.6%増、経常利益4億円/69.9%減)において、輸入品在庫(主にハリボーやリンツ)の処分販売費用が発生し、約9億円利益を押し下げた。
なお、投資関連では既存物流センターの庫内設備やIT機器の入れ替え等の更新投資が110億円(17億円増加)。DDマーケティング関連投資や海外事業での出資(ベトナム・アメリカ)等の成長投資で39億円(25億円増加)。合計149億円(42億円増加)の投資を行った。
「MS Vision 2030」で鍵を握る3つの成長戦略。①「デジタル活用」では、クラウド上における基幹システム刷新プロジェクト「シン・MILAI構想」が始動した。同時にunerry社とdely社との間で新たなデータ分析プラットフォームの構築を開始し、SENSY社とは食品流通業界向けAIサービスを共同開発。物流事業では分社化による「ベスト・ロジスティクス・パートナーズ」を設立し、今年4月から稼働を開始した。また、物流面ではPALTAC社との協業をスタート。Hacobu社とは輸配送効率化システムの構築に向けた共同開発を進めている。
②「新たな需要の獲得」は、国産オリジナル商品(生活志向など)の海外市場への輸出を拡大したほか、パートナー企業との協業による海外展開を進めている。
③「人的資本強化(人財育成)」では、人財ポートフォリオ2030を策定し、3年連続でのベースアップを実施。社員エンゲージメントの進捗と業務生産性の向上につなげた。
同日、親会社である三菱商事から公開買付開始に関する発表が行われ、上場廃止となる予定から次期業績予想は発表されなかった。
現在、三菱食品の株式を50.11%保有する三菱商事は、「経営戦略2027総合力をエンジンに未来を創る」において、収益基盤の強化を重点施策の一つに掲げ、食品流通事業においてはM&Aやアセット拡充等と通じて物流や海外、デジタルマーケティング事業の拡大、DXを活用した効率化等に取り組んでいる。その上で両社の経営資源を有効活用し、三菱食品のさらなる強靭化と成長事業の拡大等の価値向上施策につなげていく。
公開買付期間は5月9日~6月19日。買付価格は普通株式1株当たり6340円。買付予定数は2171万8995株(下限710万株)。決済は6月26日開始。スクイーズアウトは9月頃を予定する。
本公開買付に関して京谷裕社長は、三菱商事出身者であることから本案件に参加しておらず、「詳細なコメントは出来ない」としつつも、「MS Vision 2030」で掲げる定量目標の早期達成ならびに、企業価値向上につながることへの期待感を示した。
2025年5月19日付