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都市部ニーズを獲得/イオンネクスト「Green Beans」

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2年目も提供エリア拡大

イギリスOcado Solutions社との提携による最新テクノロジーを駆使したネット専用スーパー「Green Beans」を昨夏立ち上げたイオンネクスト(バラット・ルパーニ社長)は、2024年度戦略説明会を7月3日に都内で開催した。大都市部における共働きニーズや子育てが落ち着いた消費者ニーズを確実につかんでいるようだ。

千葉市緑区誉田町の誉田CFC(顧客フルフィルメントセンター)が2023年7月10日の本格稼働から1年。誉田CFCを核に、荷物の積み替え作業だけを行うスポーク拠点を含めた配送ネットワークが確立。提供エリアは当初の東京都5区、千葉県3市でのサービス開始から、6月には東京都文京区と墨田区を加え、現在では東京都13区、千葉県5市、神奈川県川崎市までエリアを拡大。取り扱い品目数は3万5千品目。会員数は21万人を突破した。

利用者の約6割が東京都、約3割が千葉県、約1割が神奈川県となっており、特に利用者が多いのはグループの店舗が少ない東京都世田谷区と港区、大規模マンションが多い湾岸エリア。共働き世代の30~40代、子育てが落ち着いた50代が非常に多いという。

「イオングループにとって、新しいお客様から支持を得られた」と語るのは、野澤知広イオンネクスト副社長兼イオンネクストデリバリー社長=写真中央。特にタイパを重視するZ世代の、時間的価値を高めるコンセプトに合致しており、黒字化までは一定の時間を要する見通しながら、今後もニーズは拡大していくと見ている。

同サービス最大の価値は最短で当日、朝7時から夜23時まで1時間単位で配送サービスが受けられる。ユーザーはアプリ上で前のユーザーを出発した時点と、自宅前に到着した時点で通知が届くサービスも始まっている。さらに一部地域では朝6時の配達も試験運用されている。

もう一つの魅力が生鮮の鮮度。ネットスーパーには自身で商品の鮮度を確認できないことから、利用に踏み切れない消費者が多い。同社はサプライチェーンの強みを生かし、鮮度の良い野菜の提供を実現した。

これらサービスを支えているのが、ゼロベースから立ち上げられたイオンネクストデリバリー。全てを一気通貫できる強みが生きた。例えば配送の場合、ユーザー住所を郵便番号別にコントロールし、AIが1秒間に1400万通りのルートを計算。リアルタイムで注文が入るアプリでは配送時間が反映され、配送効率改善と注文件数増加の双方を可能にした。

そして、ドライバー(デリバリークルー)は最終顧客との接点であり、質の高い接客が求められる。最新技術によるバックアップ体制がそれを実現し、接客と運転技術を高める教育時間を充実させることで、クルーの女性比率が13%と高いのも特徴。

今後の計画は会員数を倍増、取り扱い品目は5万点まで伸ばしていく。配送ネットワークは、今年5月に東京・西日暮里にスポークを開設し、8月には板橋に設置して板橋区・豊島区・練馬区でのサービスを開始。また秋には豊洲、葛西、市川に開設予定で、配送効率を高め、新たなエリアでのサービスを広げる。今後はマーケットが肥沃な横浜エリアと、千葉の柏・流山エリアへと拡大を予定している。

商品を供給するCFCでは、26年度稼働を目指した八王子CFCが5月に着工。完成後には東京・神奈川エリアへと供給を開始する。さらには埼玉エリアで、久喜宮代CFCの27年度稼働が決定した。供給能力は誉田や八王子CFCの約2倍、建物は約1.5倍のスケールで、スーパーマーケット80~100店舗分の供給能力を有する。また近隣エリアには食品メーカーの工場も多く、物流面での協業も視野に。

さらに誉田CFCでは最新のアームロボット30台を来春導入し、ピッキング作業の半分以上を処理する。ラックへの積み込み作業も自動化するなど、Ocado社との協業はさらに進む。

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イオンネクストの太田正道副社長=写真右=は、ユーザーのリピート率は5割を超え、平均バスケット単価は約15%上昇したと指摘し、引き続きリピート施策と継続施策を強化していく方針を示した。

現在、生鮮3品、乳製品、冷凍食品、ミールキットが好調で一般的なスーパー同様に売り上げの半分を占める。イオンのトップバリュも高いニーズが続いている。大容量品では卵やナッツ類の販売が好調で、3月にスタートした「ふるさとマルシェ」ではご当地食材の売れ行きも良い。他にもヘルス&ウェルネス関連、日用雑貨、ペット用品、ベビー用品なども売り上げが伸びた。ファーマシーではファストドクターといった異業種との連動も図るなど、サービス拡充が続く。会員基盤を拡大しつつ、買い物チャネルとしての想起順位を引き上げ、ウォレットシェア拡大を図る。

カギを握るのは〝鮮度〟。「ネット専用スーパーだからできる顧客価値」と太田副社長。1週間鮮度保証を掲げる「鮮度+」は15品目まで拡大。累計販売点数は25万点まで伸びている。今夏は畜産商品のサービスを開始し、「鮮度+」の総品目数は30品目まで拡大する。他にも冷蔵では水産のロングライフ化や、ミールキットの開発を進めている。

そして、新たな商品となるのが、食べごろの期間を保証する新ブランド「食べごろ+(たべごろぷらす)」。ゴールドキウイやアボカド、飯岡タカミメロンなど8品目を7月4日から発売。他にもリードタイムの短縮により、収穫当日入荷・翌日配送を実現した農産物もネット専用スーパーの魅力。冷凍食品でもプロトン凍結、CAS凍結による冷凍技術が冷凍食品の鮮度改革につながる。生魚や寿司、アイスなど、冷凍における鮮度の重要性を訴求していく。

なお、7月3~30日、感謝祭を開催。イオンモール幕張新都心では、7月20・21日に記念イベントも行う。

ネット専用を活かした鮮度で顧客価値向上

2024年7月15日付

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