関連業界への支援も急げ
首都圏で緊急事態宣言が発出され、外食産業の回復傾向に水を差している。営業時間は1都3県で1月8日~2月7日の間は20時まで、酒類の提供は19時までとなり、特に居酒屋業態は「勝負にならない」と苦境が続く。
大手居酒屋チェーンでも1都3県では昨春以来となる大規模な休業に踏み切る動きが出ている。ワタミが83店舗、串カツ田中ホールディングスは全国直営109店舗、このほか各社も休業を発表しているが、関西や中京地区など緊急事態宣言の発出地区拡大が不可避となり、休業店舗は今後も間違いなく拡大する。
昨年の全国における居酒屋の倒産件数は189件(帝国データバンク調べ)で過去最多を更新。業態別でも抜きん出て多く、小規模事業者の倒産が多かった。昨年の店舗の売り上げも前年の半分程度のレベルから回復が進んでおらず、今年も厳しい船出であると言わざるを得ない。
こうした中で、時短の対象外となるデリバリーやテークアウトの強化がさらに加速する。業態別ではハンバーガーなどファストフードの洋食がデリバリーの押し上げもあって数字を堅持し、昨年は強みを発揮した。足元では出前館などのフードデリバリーの受注が引き続き拡大しており、消費者のニーズは依然強い。
デリバリーにトライする店舗も拡大しており、出前館の加盟店舗数は5万店舗を超え、前年の倍増レベルで推移したとみられる。さらに同社は今年から、配達代行手数料を30%から25%に引き下げ、初期制作費用(基本料金)を無料とする新プランを打ち出して囲い込みに動く。フードデリバリー新規参入組も、お得な条件で囲い込みを狙うなど競争は激化している。飲食店にとっても競合の急増でハードルは高くなってきているが、ニューノーマルに対応すべく取り組まざるを得ない。
外食産業も厳しいが関連業界への影響も大きい。外食品卸や酒販店、生産者など関連業界は数多あるが、飲食店の休業補償のようなものはなく昨年はずっと苦境にあえいできた。今年はようやく政府も重い腰を上げ、外食関連業界への支援策を発表。経済産業省は1月12日、時短要請を受けた1都3県にある飲食店と取り引きする業者らに関して、今年1月もしくは2月の売り上げが、前年同月と比べて50%以上減った全国の中堅、中小企業に最大40万円、個人事業主に最大20万円を一時金として給付する考えを明らかにした。
給付開始時期は3月ごろを目指すが、具体的な検討はこれからで、緊急事態宣言の発出地域拡大で対象事業者を広げる検討も必須。「遅すぎる」「一律40万円では少なすぎる」との声も強いが、前進したことは良いこと。まずは迅速な給付開始が求められる。
2021年1月18日付