アフターコロナへ対応
5月7日から東京都文京区の新本社で業務を開始した三菱食品は、5月11日に2020年3月期決算を発表。同日、Zoomを活用したオンライン説明会を行い、森山透社長と山名一彰CFOが前期概要と今後の見通しについて語った。
新型コロナウイルス感染症の広がりを受け、政府が2月27日に休校要請を発表。その影響から2月24日週、3月2日週ともに出荷は前年同期比で105%と急増。食を支えるための安定供給は社会的使命として優先対応してきた。
19年度連結業績は、売上高2兆6546億9800万円(前期比101.3%)、営業利益153億7800万円(91.9%)、経常利益166億7200万円(90.7%)、親会社株主に帰属する当期純利益114億800万円(95.4%)の増収減益。新型コロナウイルスの影響などで業績予想を上回った。
売上高はドラッグストア(前期比24.8%増)等の取引が堅調。利益面では昨年後半に新設した物流センターの立ち上げ費用などが響いた。品種別ではビール・その他酒類が取引の拡大や増税前の駆け込み需要などから増加。菓子類もスナック、ナッツ類が好調だった。冷凍食品類とチルド食品類は季節商材が振るわず。
セグメント別業績は次の通り。加工食品=売上高8050億円(35億円増)、営業利益28億円(6億円減)。低温食品=売上高1兆370億円(88億円減)、営業利益68億円(17億円減)。酒類=売上高4935億円(283億円増)、営業利益32億円(11億円増)。菓子=売上高3167億円(114億円増)、営業利益36億円(2億円減)。加工食品はドラッグストアとディスカウントストアなどが好調も、物流費などが増加。低温食品は取引の見直しや物流費などの増加が影響。酒類は増税前の駆け込み需要に加え、CVSと卸売等が好調に推移。菓子はドラッグストアなどが取引拡大も物流費などの増加が響いた。
なお同社が出荷する平均ケース単価は、加工食品は調味料類が伸びたことから36円増の2258円。冷食・アイスは業務用の落ち込みが響き29円減の3877円。酒類は低価格なRTDや第3のビールが伸びて107円減の3371円。菓子は16円増の2242円。
20年度業績は新型コロナウイルスの影響が上期まで残ると仮定し、売上高2兆6000億円、営業利益144億円、経常利益160億円、親会社株主に帰属する当期純利益111億円の減収減益予想。設備投資100億円(前期136億円)、システム開発等50億円(42億円)、事業投資40億円(7億円)。償却額・支払リース料は設備投資60億円(64億円)、システム開発等40億円(35億円)をそれぞれ見込む。
森山社長は今年度について、人手不足による物流費・人件費の高騰、小売業の競争激化を受けた合従連衡、新型コロナウイルス感染拡大の3つの事業環境を背景に10%の経費削減に着手。①卸事業の再強化②デジタルを活用した構造改革の方向性③持続可能な未来への取り組みに向けて(SDGs)を重点的に取り組む。また、消費の二極化がさらに進むとの見方を示した。
具体的には同社が提供する不変の価値として〝3つの安〟(安全・安心・安定)を磨く。事業環境の変化に伴う新たな営業スタイルとして、在宅勤務、WEB会議、オンライン商談などを進め、製配販の各段階でのオーバースペックなサービスと機能を見直し、営業のデジタル化を推進。その中で「アフターコロナも、ビフォーコロナにはならない。より良いスタイルへの進化が必要」と強調した。川上寄り事業、「食べるをかえる からだシフト」などオリジナル商品も継続強化する。
取引先と連携した物流与件緩和を継続し物流コストを抑制。持続可能な物流体制をスピード上げて取り組むべく、検品レス、伝票レス、入荷受付予約システムなどデジタルの活用で生産性向上を図る。データ、デジタルを効率的に活用した三菱食品らしさで、需要の創造につなげる。
ポイントとなるのがDX(デジタルトランスフォーメーション)。社内ではRPA/OCR・AI照合の展開を完了、7万時間を創出し業務の効率化を推進する。社外では棚割やデータ分析、販促など各種提案のデジタル化により、メーカー向けマーケティングを支援。業界全体では商品マスタや照合、EDIといった非競争領域で業界連携を進める必要性を示した。
「中間」から「中核」を目指し、食と暮らしの明日を創造する企業ミッションを掲げる同社は、SDGsも重要なテーマ。「健康でより良い食と暮らしの提供」「食の安全・安心・安定供給」「食流通のムリ・ムダ・ムラの是正」「環境に配慮した事業推進」。この4つの重点課題に取り組み、30年までに健康に資する商品の創出と拡充、CO2排出量削減、食品廃棄量削減、健康経営の実践によるエンゲージメント向上を達成する。
2020年5月18日付