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独自技術で新たな代替肉/森永製菓~食の挑戦②~

投稿日:2022年11月14日

「SAI MEAT」発売

松﨑部長

新規事業開発部長
松﨑 勲氏

森永製菓がプラントベースフード市場に参入する。独自技術により実現した新食感の代替肉「SAI MEAT(サイ ミート)」を9月20日に業務用として発売し、現在は飲食店などを中心に販売。他製品とは異なる特長を紹介することで、認知度向上を図っている。事業背景や今後の方向性などについて、新規事業開発部の松﨑勲部長に話を聞いた。

「SAI MEAT」は、大豆タンパクと小麦タンパクが主原料の植物性代替肉。サラダチキンのような見た目の一枚肉タイプで、ほぼ同量の90g。しかし断面は一見すると多層構造のようでもあり、やわらかくしっとりしているのに噛み応えがあるのが最大の特長。
「何よりもこだわったのは食感。肉の中でも食感が際立つ鶏むね肉のような弾力と厚みのある肉感を繊維状組織にすることで実現しました」

また、味にクセがなく大豆臭が抑えられているなど他製品とは異なる特長を多々有しており、いずれも菓子・ゼリー飲料をはじめとする自社商品の製造技術や品質管理システムなどを応用して開発された。例えば、菓子製造時に使用する食品加工機器のエクストルーダーでペースト状の原料を押出成形しており、これらの独自技術は今年3月に特許を取得している(第7036972)。

加えて簡便性も高い。賞味期限が長く常温で10カ月保存可能。水戻しや解凍不要ですぐに使用できる。加熱調理などせずにそのまま食べておいしいのも特長だが、レトルト加工することで味・風味ややわらかさを損ねることなく長期保存に成功した。食品ロス削減への配慮でもある。
「現在は上市したばかりのため研究所内で製造していますが大量生産の目途もつきつつあります。当面の目標は受注数量の増加で、併せて味・食感を追求するための研究開発も継続しています」

そもそも現時点において「SAI MEAT」は、今後幅広く流通させるために市場動向やユーザーニーズを見極めるための最終段階にある。将来的には家庭用の販売も視野に、新規事業として慎重に進めている状況だ。
「当社で植物性代替肉を販売するのは今回が初めてではありません。しかし過去の経験も踏まえ、他に類を見ない新しい商品づくりに新規事業として挑戦しているのです」

同社では、まだ輸入牛肉が高価で容易に食べられなかった1961年に、大豆タンパクが主原料の人工肉「バーグメート」を発売。その後、家庭用商品として玄米入りの大豆肉「ZEN MEAT」シリーズ3種を2017年にグループ会社が発売した。しかし当時は、乾燥タイプの大豆肉を調理食材として一般家庭に普及させるには、今よりもさらに難しい面が少なからずあった。現在は販売を終了しているが色々な経験が積み重ねられ、今日に至る。

一方で「SAI MEAT」は、まだ国内でプラントベースフードの認知度が極端に低かった18年ころ、現在の開発担当者が欧米での食の新たな動きとして植物性代替肉に注目し、企画提出したことに端を発する。翌年に開発スタートし、既存技術を用いながらも全てをゼロから作り上げた。製造方法を確立させるまでに試作を100回以上繰り返し、約3年を費やしたという。
「原材料選びから配合・混錬や温度調節、使用する機械など全ての組み合わせが少しでも異なると別ものになってしまう。まさに苦心の賜物であり、大事に育てていきたい価値ある商品です」

2022年11月14日付

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