「『知』の集積と活用の場」の研究成果発表
農林水産省は農林水産業・食品産業に他分野のアイデア、技術などを導入し、新たな商品化・事業化に結びつけていくオープンイノベーションや産学連携の取り組みを推進している。3月19日には、農林水産省本館で「『知』の集積と活用の場」の研究開発プラットフォームから生み出された研究成果・商品化の事例について発表した。
この取り組みは人、情報(場)、資金の3つをオープンにすることで多様な参加者による協創を促進。農林水産・食品分野の融合を図り、農林水産・食品産業の競争力強化、豊かさを実感できる社会の構築および、国際社会の持続的な発展に貢献する場を目指すことをコンセプトに、「『知』の集積と活用の場」産学官連携協議会が平成28年4月に設立。現在160を超える研究開発プラットフォームが設立され、全国各地で新たな商品化・事業化を目指し、研究コンソーシアムの活動が広がっている。
商品化事例説明会では、木元広実農研機構畜産研究部門畜産物機能ユニット長が、老化抑制効果が期待されるプロバイオティック(保健機能)チーズについて発表。農研機構が保有する乳酸菌H61株は、マウスの骨密度減少抑制や中高年女性の肌の保湿に関し、有効な効果が報告されているプロバイオティック乳酸菌。一般的にプロバイオティック機能を持つ乳酸菌は乳中での生育が良くないため、チーズ製造には不向きだが、H61株はもともとチーズ製造用の乳酸菌であるため、プロバイオティックチーズの製造が可能になったと説明。木元氏は一昨年1月に蔵王酪農センターでH61株を用いたミニゴーダを試作。現在、新しいチーズの開発に向け、他機関とも連携し、アミノ酸量や菌数測定などの共同研究を行っていることを報告した。
この他、小山正浩ウェルナス代表取締役は新規食品機能性成分・コリンエステル(アセチルコリン)を関与成分としたナス健康食品(サプリメント)、二階堂英城水産研究・教育機構東北区水産研究所宮古庁舎沿岸漁業資源研究センター長が、国産飼料米を利用したギンザケ用配合飼料について説明。佐藤孝秋田県立大学生物環境科学科土壌環境学研究室准教授は、土壌病害抑制植物と抑制微生物資材の組み合わせでダイズ収量が増加した研究結果などを紹介。抑制微生物の資材化に向けては、企業との連携で原材料に鶏ふん堆肥が最適であることを見い出し、抑制微生物の機能を維持した低コスト資材製造技術を開発中であることを明かした。
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