動物の赤ちゃんが飛び出す“癒し”の新聞広告
公益社団法人日本アドバタイザーズ協会(JAA)主催の「第59回 JAA広告賞 消費者が選んだ広告コンクール」の表彰会が、6月2日に行われた。
東京ミッドタウンで5月31日~6月2日行われた国際的広告イベント「AWA(Advertising Week Asia) in Tokyo 2022」の最終日に、同イベントコンテンツの1つとして開催されたもの。
会場での贈賞は各部門のグランプリと経済産業大臣賞のみで、メダリスト(入賞者)は事前に行われた贈賞模様を表彰会会場では映像で紹介された。
「JAA広告賞 消費者が選んだ広告コンクール」は世界でも類を見ない、広告関係者が審査員に含まれない総合広告賞。119人の一般消費者が審査員となり、約1カ月かけて全作品を評価し、各部門(新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、デジタル、屋外・交通広告)の最優秀賞(JAA賞グランプリ)および入賞(メダリスト)を選出。応募作品数1530件の中から各部門のグランプリ6件とメダリスト58件、別途で有識者が審査選出した経済産業大臣賞1件が、今年1月13日に審査結果として発表されている。
なお、2020年が開催中止となったため、2019年10月~2021年9月までの広告期間2年分が対象となった。
表彰会では、JAA賞グランプリ新聞広告部門に選ばれた森永乳業「海に行けないみなさんに、海から会いにきました。~飛び出す癒し新聞~」や雑誌部門の味の素「よくがんばりませんでした」、経済産業大臣賞のサントリーホールディングス「宇宙人ジョーンズ・宇宙人からのアドバイス篇」ら各社の広告担当者が登壇し、受賞の喜びを語った。
分野にかかわらず広告の多くは消費者に向けたもの。
そのため消費者が選ぶJAA広告賞は、海外含め数多くある広告賞の中でも広告担当者が「最も獲得したい賞のうちの1つ」とされている。
新聞広告部門グランプリの森永乳業 マーケティングコミュニケーション部の林正義部長は「消費者に癒しを与えたい、その一心でつくった」とコメントした。
審査委員長を務めた青山学院大学経済学部の芳賀康浩教授によると、ここ数年、特に新型コロナ発生以降の広告には大きな変化が生じているという。社会や消費者に寄り添う気持ちが強く感じられ「コロナが広告の力を見直す機会になったのだと思う」と講評した。
■受賞社セミナーで広告の極意「無理はチャンスの入口」
表彰会後には、森永乳業の林部長と同広告を制作した博報堂の河西智彦氏による受賞社セミナーが行われた。
今回の森永乳業の新聞広告は、大きな挑戦への結果であった。新聞を開くと動物たちが飛び出す「飛び出す絵本」の新聞版で、広告業界において「新聞広告では絶対にできないこと」とされていたこと。
しかし、チルドカップコーヒー売上No.1「マウントレーニア」のブランドイメージアップを目指すプロジェクト施策の一環であったことから、多くの消費者に共感が得られて感情を動かす「社会共感型の広告コミュニケーション」を採用し、今までにない努力と工夫と「本気度を示すこと」が必要とされた。
注目したのは、コロナ禍で疲弊する人びと。そうした人びとに「癒しを与えたい」と考えたのが同プロジェクトの始まりであり、誰もが癒される動物の赤ちゃんに着目した。動物園・水族館とのコラボ企画として、パッケージに動物の赤ちゃんをプリントしたマウントレーニアの発売や、動物園・水族館でのイベント開催なども行った。
河西氏は、今まで不可能とされてきたことへの挑戦と実現について「最初からあきらめる人、絶対成功しないという人の言葉には耳をかさない。無理はむしろチャンスの入口であり、過去や常識にとらわれずにどうしたら実現できるか――それだけを考え、追求した」と話した。
広告効果がでにくいといわれるこの時代ではあるが、飛び出す新聞広告を含めた同プロジェクトにより、マウントレーニアの2021年出荷数は前年比114%の約3500万本で過去最高を記録した。
マウントレーニア「癒しプロジェクト」は好評につき、2022年版として現在も継続実施されている。
「公益社団法人日本アドバタイザーズ協会」公式サイト
https://www.jaa.or.jp
「JAA広告賞 消費者が選んだ広告コンクール」サイト
https://www.jaa.or.jp/contest/adaward/
「第59回 JAA広告賞 受賞作品」一覧
https://www.jaa.or.jp/contest/adaward/archives/
森永乳業「マウントレーニア」ブランドサイト
https://www.mtrainier.jp/
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