「和食と健康 2021春」シンポジウム
「日本食、中でも発酵食品である“みそ”は体に良い」
昔から語り継がれてきた発酵食品の健康作用。
2013〜2016年に実施された世界最大規模の市民参加型健康調査「ながはまコホート」をはじめとする多くの研究や調査により、効果や成人病などへの関係性が次々に明らかとなっている。
一方で具体的なメカニズムや直接関与する物質などについては、未だ解明されていないことが多い。
しかし、京都大学大学院農学研究科の佐藤健司教授は、みそに含まれる「ペプチド」などが関与物質であることを最新の研究結果として発表した。
2月28日にオンライン開催された、一般社団法人和食文化国民会議と一般財団法人キヤノン財団の共催シンポジウム『和食と健康 2021春〜食の恵みで健康に賢い「食」を考える』の講演で明らかにした。
佐藤教授は「和食をささえる麹発酵食品の健康機能」をテーマに、「ペプチドがどのように働くのか」「神経伝達物質モノアミンによる作用」などの究結果を報告。学会未発表の内容も一部含まれる。
発酵食品、特に麹みそは多くの栄養成分が含まれ、それら成分のほとんどは超微量で含まれるのみ。
そのため健康作用については解明が進んだものの、どの成分がどのように作用しているかなどのメカニズム解明は困難とされていた。
しかし佐藤教授は、検査手法や計測機器が新たに開発されたため、他の研究結果をもとに成分を「ペプチド」と推測。
ペプチドに着目したきっかけは、かつて「コラーゲンを経口摂取しても皮膚まで届かない」とされていたのが、最新研究により「コラーゲン(アミノ酸)は分解されペプチドとなって届く」と解明されたことだった。
動物実験では、3年熟成の「八丁味みそ」を使用した。
その結果、麹発酵によりアミノ酸の1種であるグルタミン酸が分解され、「ピログルタミルペプチド」となり、肝炎や大腸炎を緩和するピログルタミルロイシ(pyroGlu-Leu)と同様に働いたことで、腸内環境を改善した。
そのほか同じくみそに超微量含まれる、アスパラギン酸ペプチドによる疲労回復効果、モノアミン(フェネチルアミン)による体細胞酸化ストレスの低下作用なども確認された。
佐藤教授によると、日本人の麹発酵食品の摂取量は1970年代をピークに年々減少し、現在は1/2〜1/3程度と推測される。
今回、みそに含まれるペプチドなどは超微量でも効果的に作用していることが動物実験で確認されたものの、ヒトによる麹食品の摂取量については「現在の倍くらい必要」との考え。
また、麹食品によっても含有量は大きく異なる。熟成期間が短い「白みそ」は極端に少なく、熟成期間が長い「豆味噌」を勧めた。
京都大学大学院農学研究科 佐藤健司教授の研究発表資料より
動物実験による「ピログルタミルロイシン (pyroGlu-Leu)」が腸内環境を改善する仕組み
一般社団法人和食文化国民会議
https://washokujapan.jp/
一般財団法人キヤノン財団
https://www.canon-foundation.jp/
WEB先行記事