「業界全体で盛り上げていきたい」城戸社長
ヤマキは〝だし〟の大切さを広く発信する「だし活プロジェクト」を10月8日から始動。同日、都内で会見した城戸善浩社長が同プロジェクトへの熱い想いを語った。さらに料理家の高橋善郎氏と愛媛大学農学部・大学院農学研究科の垣原登志子准教授が、ヤマキの伊藤羊一郎家庭用事業部長、藤原佳史かつお節・だし研究所長とともに、だしの魅力を語るトークセッションも行われた。
同社の歴史は初代・城戸豊吉氏が取引に訪れた大阪の市場で削り節専用切削機と出会ったところから始まる。この削り節に将来性を感じたことから、愛媛県伊予市において、1917年(大正6年)に削り節の製造販売で事業を開始。2017年には100周年を迎え、1世紀にわたりかつお節だしひと筋に着実な発展を続けてきた。城戸社長は「次の100年も鰹節屋だし屋ヤマキであり続けることがヤマキの存在意義」と力を込める。
そのために必要となるのは、だし原料の安定的な調達。かつお節はもちろんその他節類を持続的に調達できることが必要であり、これらだし原料を使いこなす力、切削、充填、抽出等を発揮し、時代時代のさまざまなニーズに応じた最終製品を開発する。花かつお、かつおパック、さまざまなだし素材の削り節、めんつゆ、白だし、鍋つゆの他にも、だしの力を使っておいしく減塩した商品のバリューチェーンを構築して消費者に届ける。
また、同社は鰹節だしを世界中に広げるため、海外への積極的な進出を続けている。現在グループグローバルとして、アメリカ、中国、韓国で製品の製造と販売。さらに今年はモルディブに鰹節製造工場を立ち上げた。関連会社では中国、台湾、インドネシアにも拠点を構え、グループグローバルの視点で、鰹節だしを拡げる体制を整えている。
一方、和食文化について城戸社長は、四季折々の催事や素材を生かしていることから世界文化遺産に登録されているが、「その味を支えているのはだしであり、だしの文化的価値と言える」と語る。さらに料理を作る喜び、おいしいねと言ってもらえる喜び、おいしいものを食べる喜びは、「我々の暮らしを豊かに幸せにする、情緒的価値を供えている」とも語る。
また、「お客様のおいしいの一言を目指して、かつお節だしと真摯に向かい合ってきた。おかげさまで多くの皆様に愛される企業となった」と振り返る一方で、日本の食卓を支えてきたかつお節だしの価値や力を知らない人がまだまだいることを指摘。
一世紀以上鰹節だしに関わってきた企業として、だしをもっと日本中へ、世界へ広めていく考えを示した。城戸社長は「そのためには1企業の活動には限界があり、メディアを含め業界関係者全体に賛同を頂きながら、生活者の意識を高めていく啓蒙活動が重要」と話し、だし活プロジェクト立ち上げに対する思いを語った。
「だし活プロジェクト」では、共感性の高そうな次の〝だしの7つのいいところ〟を選定。①おいしく減塩できる②野菜がおいしくなる③ヘルシーな和食(低糖・低脂肪)が作れる④いろんな素材の味がひとつにまとまる⑤どんな料理も簡単に味付けできる⑥素材のうま味や風味を引き出す⑦身体にやさしく心を落ち着かせる。
まずは特設サイトを開設。かつお節の基本情報はもちろん、だしの力でおいしく減塩する、かつお節で野菜をおいしくするレシピ、さらには子どもの野菜嫌いを克服するメニュー等、動画を交えながら紹介。今後は11~12月にかけてSNSを中心に、来年はオリンピック前後での情報発信。売り場での展開も進めていく。さらに研究成果なども準備が整い次第発表していく。
なお〝だし活〟は青森県が商標登録を取得済みだったが、同県から使用の許可を得ている(伊藤氏)。同時に同県との取り組みも開始している。
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