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水素焙煎を本格展開/UCCグループ

投稿日:2025年4月28日

環境、味わいの両立実現

水素焙煎機「ハイドロマスター」

UCCグループは、カーボンニュートラルなコーヒー製造を目指し、かねてより計画していた水素焙煎コーヒーを本格展開する。製造拠点の「UCC富士工場」(静岡県富士市)に、大型水素焙煎機「HydroMaster/ハイドロマスター」(最大製造能力年間約6000t)を約10億円を投じ導入。量産を世界で初めて開始し、4月23日から業務用・家庭用製品全7品を発売した。

「より良い世界のために、コーヒーの力を解き放つ。」をパーパスに掲げ、コーヒーの新たな可能性を追求し、今までにないコーヒーの価値創造にチャレンジするUCCグループ。UCCサステナビリティ指針を制定し、「2040年までにカーボンニュートラルの実現」に向けた取り組みを推し進めている。
そのために注目したのが、コーヒー豆の焙煎工程。一般的に熱源は、天然ガスを使用するが、カーボンニュートラルの観点からCO2排出が課題となる。

そこで、燃焼時にCO2を排出しない水素火炎を熱源とした水素焙煎に着目。21年から採用を検討し、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業の採択を受け、官民一体となり、水素バーナーの開発・実装に取り組んできた。
環境意識が高まる中、昨秋兵庫工場(兵庫県たつの市)のパイロット焙煎機を活用した限定品を発売した際は、想定を上回る売れ行きを見せた。今年1月、一連の水素焙煎に関する発明について特許を取得。そして4月から、富士工場の大型水素焙煎機の運転を開始するに至った。なお使用する水素は、山梨県からグリーン水素を調達する。

上島社長

4月23日に富士工場で会見を開き、UCCジャパンの上島昌佐郎社長は、「水素焙煎は、カーボンニュートラルに向けた大きな一歩」と期待を寄せ、詳細を説明した。
従来の天然ガスの焙煎機のCO2排出量は、1台当たり年間570tだが、水素焙煎機はゼロを実現。例えば毎日2杯のコーヒーを水素焙煎に切り替えると、1年間で植樹1本分のCO2削減効果が見込まれるという。
また、天然ガスと比べ火力の調整幅が広いという特長もある。これにUCCが長年培ってきた焙煎プロファイルコントロール技術を組み合わせることで、水素焙煎だからこそ引き出せる多彩な味覚形成、理想的な焙煎が可能となった。

家庭用・業務用全7製品

新製品では、家庭用はフルーティ、かつフローラルな風味のエチオピア・イルガチェフェ地方産コーヒー豆を使った「ドリップポッド」専用カプセル(12個入、税込2073円)、炒り豆(200g、5400円)、飲料(リキャップ缶275g×4本、1674円)をオンライン通販、直営店では量り売り(100g、2700円)を行う。
業務用では、有機栽培豆などを使用した「シティロースト」「ダークロースト」(各豆300g)、コロンビア産使用の「ワンドリップコーヒー」(10g)をそろえる。
普及に向けては、水素焙煎への理解、認知拡大が求められ、環境配慮だけでなく、新たなコーヒーの魅力を引き出すといった価値を積極的に訴求していく。
直営店では従来の焙煎方法との飲み比べを行い、好意的な反応が得られているほか、業務用ではインバウンド需要が高いホテルなどで採用が進む。さらに環境活動に関心が高い自治体との連携、海外展開も視野に、〝水素焙煎コーヒーという、新しい当たり前〟の創生に乗り出す。

また4月23日には、COREDO室町テラス(東京都中央区)で、水素焙煎コーヒーの一日限定無料イベント「UCCミライ珈琲店」も開催。カプセル式ドリップコーヒーシステム「ドリップポッド」の発売10周年記念企画の一環でもあり、来場者には簡単なクイズと、マシン「DRIP POD YOUBI」での抽出体験、試飲を通して、水素焙煎への理解を深める機会となった。

都内でのイベントの様子

2025年4月28日付

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