総額88億円還元で需要喚起狙う
キャッシュレス決済に関わる動きが活発化し、すでに〝○○ペイ〟が乱立状態。現況は主導権争いというよりも、まずはトライアル喚起を図る段階にあり、消費増税を機にポイント還元などで一気に認知を向上させる狙いがある。キャッシュレスの本丸は、現金支払いが主となるリアルの店舗。今後は小売主導になっていく可能性が高いとみられている。
ファミリーマートでは7月1日から、バーコード決済付きスマホアプリ「ファミペイ」サービスがスタートする。同社の狙いは、キャッシュレスの先にあるお財布レス。決済手段のほか財布内にあるポイントカード、レシート、クーポンの機能を組み込んだ。セルフレジにも対応するなどファミマでは、財布を持たずスマホ一つで買い物ができるようにする。
6月27日に本社(東京・港区芝浦)で発表会を開き、澤田貴司社長はお客の利便性の向上を第一に楽しい買い物の実現が我々の使命とし、「オープン主義を徹底しポイント、バーコード決済など色々と使える。顧客を囲い込むよりも自由を追求する」とデジタル戦略の根幹を説明。また経営企画部の植野大輔デジタル戦略部長は「爆速でスタートさせる」と意気込んだ。
利用者獲得の呼び水となるのは期間限定の「総額88億円 あげちゃう」キャンペーン。これまでのリアルの販促費をデジタルに振り分けて捻出した。アプリをダウンロードし登録するだけでファミチキなどの無料クーポン、現金チャージだけでボーナスポイント最大15%(7月31日まで)を還元する。公共料金など収納代行でもポイントが付く上、11月からはTポイントに加え、dポイントや楽天ポイントも利用できる。
ファミペイ導入により実質的に年齢、性別、住所のほか購買記録などデジタル顧客基盤を収集。今後、大量のビッグデータを活用した広告マーケティング事業、金融サービス事業の展開を展望する。しかし、まずはスマホ決済の浸透をはじめとした足元の課題への対応だ。清算時の混雑緩和、オペレーションの軽減など、いかに導入効果を高め広範に享受できるかが注目される。
2019年7月8日付