商品開発・トレーディングに注力
総合食品商社、三菱商事グループとして、中間から中核を担う企業への進化を目指す三菱食品。2016年度を初年度とする5カ年の「経営方針2020」では経常利益率1%の早期実現を目標に掲げる。3年目となる18年度(19年3月期)は増収増益で着地。売上高は期初予想を上回ったが利益面では物流費の上昇等で僅かながら計画を下回った。5月9日に都内で会見した森山透社長は「今期は一旦身を屈める」と語り、事業構造の進化を図り持続的な成長に向けた布石の年にする考えを示した。
18年度連結業績は期初予想に対して、売上高はCVS等を中心に取引が拡大し703億円上回った。利益面では物流費等の上昇から営業利益で7億円、経常利益1億円未達ながら、増収に伴う売上総利益の増加から前期との比較では僅かに増益を達成。親会社株主に帰属する当期純利益は特別損失の改善等から予想を5億円上回った。
品種別売上高では冷凍食品類が市販用、業務用ともに好調。チルド食品類はCVS等との取引拡大が寄与し全体を牽引。業態別ではCVSの新規出店効果等も寄与。メーカー・他は新規連結子会社(エム・シー・フーズ)の影響が大きく貢献。SM(今期からGMS含む)が低温食品、酒類の伸長で増加。なお、全品種・全業態で前期を上回ったのは統合後初。
一方、セグメント別業績では物流費の上昇が大きく影響した低温食品を除き増収増益。加工食品は売上高8016億円(前期比310億円増)、営業利益36億円(4億円増)。低温食品は売上高1兆458億円(433億円増)、営業利益85億円(7億円減)。酒類は売上高4652億円(240億円増)、営業利益19億円(5億円増)。菓子は売上高3053億円(80億円増)、営業利益38億円(前期並み)。加工食品、低温食品ともにCVS、ドラッグストア等との取引拡大が寄与。酒類は卸売、CVS等との取引拡大、菓子もCVS等との取引拡大が寄与。
また、投資額は前期を13億円上回る185億円。設備関連(136億円)は物流センターの新設や既存物流センターの庫内設備工事等が中心。システム開発等(41億円)も物流センター運用システムやデジタル技術の活用に係る開発等。この他事業投資に7億円。償却額および支払リース料は前期を10億円上回る84億円。内訳は設備59億円、システム25億円。
中期経営計画の実行状況について、森山社長は子会社6社の統合を含めた営業拠点の再編、ブランド戦略本部・トレーディング本部の新設による商品開発・トレーディング事業の強化、エム・シー・フーズ子会社化に続く、業務用販社クロコの新設等を評価。特に商品開発・トレーディング事業の強化には手応えを示した。
一方、物流コスト増加への対応やAI・IoTによる生産改革については道半ばとの見方。19年度は20年度以降の持続的成長に向けた布石の年にする考えで、経営を取り巻く環境に対応する事業構造の進化をテーマに、卸事業の磨き込み(ロジスティクスと営業の連携強化)と、事業領域の拡大を推し進める。
事業領域の拡大については全国フルラインの強みを活かし、「食べるをかえる からだシフト」をはじめとするオリジナル商品の開発・販売を強化。「HARIBO」「Barilla」など輸入商品を強化する。さらにエム・シー・フーズ等子会社を軸に機能強化と販路の拡大、原料資材取引の拡大に注力する。
同時に人財の流動性を高め、既存領域の徹底した効率化と成長分野への機動的な人財シフトを行う。組織体制は「営業」「SCM」「職能」の3本柱に集約。さらにデジタル技術を活用した業務の効率化を推進。バックオフィス・間接部門の在り方を見直す。具体的にはRPAにより年間2万6000時間、OCRにより4800時間の創出を図り業務の効率化を図る。またAIの早期実装に向けた準備・検証を進める。
そして持続的な成長に向けてSDGsの重点課題に取り組み、来年の同時期にはKPIを含めた詳細を発表する
なお19年度は増収減益の計画。投資額は設備関連で120億円、システム40億円など合計200億円。償却・支払リース料は95億円(内設備関連60億円)を予定。
この他、セグメント別ケース単価(15~18年度)を公表。加工食品と酒類の下落が続いている。加工食品は15年2270円、16年2249円、17年2258円、18年2222円。低温食品は3632円、3830円、3887円、3906円。酒類は3550円、3537円、3526円、3478円。菓子は2092円、2175円、2226円、2226円。
2019年5月20日号