| 中井貫二社長 インタビュー
大阪発、お好み焼きを世界へ

中井貫二社長
2025年大阪・関西万博の開催で注目を集める大阪。来場者数は1千万人を突破し、市内では「グラングリーン大阪」の開業やIRの計画も進むなど、大阪はかつてない賑わいを見せている。国内外の来訪者が増えるなか、大阪の食文化、とりわけ〝粉もん〟に対する関心も急上昇。今回は、大阪発の老舗お好み焼きチェーン「千房」を率いる中井貫二社長に、創業からの軌跡と現在の戦略、そして今後の文化継承・グローバル展開について話を聞いた。
「大阪のテッパンを、世界のテッペンへ」。そう語るのは、お好み焼きチェーン「千房」を率いる中井貫二社長。同社は1973年の創業以来、大阪を拠点に国内外で事業を展開。業界に先駆けてホテルや百貨店への出店を進めるなど、粉もん文化のパイオニアとしての地位を確立してきた。現在は国内約60店舗、海外にも複数の拠点を展開し、訪日観光客の増加とともにその存在感を一段と強めている。

1番人気の「道頓堀焼」
―非効率こそ付加価値
中井社長は「非効率を恐れない価値創出」という方針のもと、全店舗に個性を持たせている。内装や空間設計だけでなく、現場スタッフの発案による限定メニューなども多く、「新メニューが次々と生まれ、私もすべては把握できていない」と中井社長は笑顔を見せる。画一化を避け、地域性や接客の自由度を尊重する運営スタイルが、顧客満足に直結している。
―コロナ禍でも貫いた「人本経営」
一方で、2020年以降のコロナ禍では、経営にかつてない試練が立ちはだかった。国内での感染確認を皮切りに、同年4月には緊急事態宣言が発令。2021年には半年にわたり営業制限が続き、外食業界は深刻な打撃を受けた。「思い出したくもない3年間だった」と中井社長は振り返る。
それでも、同社が貫いたのは「人」を守る経営姿勢。売上が激減する中でも、全社員・アルバイトの雇用を維持し、パートタイム従業員の正規雇用化も積極的に進めた。同社のシンボルマークにもなっている〝人〟が経営の根幹だという強い信念は、厳しい局面においても一貫していた。結果として、ポストコロナの人材確保難にも柔軟に対応し、安定した店舗運営を継続できている。

マヨビームを披露

追いソース・追いマヨも楽しめる
―万博とIRは絶好の機会
2025年の大阪・関西万博は大阪の食文化を世界に発信するまたとない機会だ。中井社長は、「前回の大阪万博が開催された1970年は『外食元年』と呼ばれた。今回は、世界トップレベルにまで進化した日本の外食文化を世界に発信する場となる」と意気込む。
さらに、IRの開業も控えておりインバウンド需要の増加が見込まれるなかで、「単に食事を提供するだけでなく、大阪らしい体験を提供することが求められている」と強調。店舗では調理工程の〝ライブ感〟を大切にし、接客を通じた〝オコノミニケーション〟の場を重視するなど、体験価値の創出に取り組んでいる。
加えて、同社は外国人材の積極雇用も進めており、英語対応メニューの拡大やムスリムフレンドリー対応店の展開などインバウンド対応にも積極的だ。さらに、海外展開としてベトナム、中国などへ出店し、「お好み焼き」のグローバルな認知向上にも力を注いでいる。今後もアジアを中心に、さらなる展開を加速していく予定だ。
―お好み焼きを次代に
中井社長は、外食関連団体の要職も務め、地域活性化にも積極的に関わっている。また、他業態や食品メーカーとの連携も積極的に展開しながら、粉もん文化の裾野を広げる取り組みを続けている。「将来的には学校給食にお好み焼きが登場するような環境を整えたい」と語り、食育の観点からも文化の浸透を見据える。
万博では、期間限定で「プロが教える!お好み焼き体験」を出展。吉村洋文大阪府知事をはじめ、国内外の来場者が集まり好評を博した。今後は同様の体験型企画を万博後も継続することを視野に、若年層への普及に注力していく。
| 現地ルポ、千日前本店

千房 千日前本店
「千房」の総本山は大阪・難波にある「千房 千日前本店」。笑いの聖地「なんばグランド花月」から徒歩1分、なんば千日前通に位置し、国内外の観光客から通なお笑いファンなど、多くの人でにぎわうエリアだ。
店内には3基の大型鉄板を備えたオープンキッチンを設置。客席にも保温鉄板が用意され、常に出来たてを提供できる仕様だ。1階はカウンターやテーブル席、2階は座敷仕様で宴会利用にも対応可能。
看板メニューは「道頓堀焼」(税込2000円)。豚肉・牛スジコンニャク・チーズ・いか・小海老など、多彩な具材を自慢のふわふわの生地に包んだ一皿で、仕上げの遠距離からかける「マヨビーム」も人気の演出のひとつ。スタッフの元気な接客とともに、大阪のお好み焼きを五感で楽しむことができる店舗となっている。
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