コミュニケーションとしての〝精神的な健康〟や、自販機事業にもメス
キリンホールディングス(HD)は11月9日、事業会社のトップ人事を発表。キリンビール社長にキリンビバレッジの堀口英樹社長、キリンビバレッジ社長にキリンHDの吉村透留常務執行役員を内定し来年1月1日に就任する。キリンビール社長は布施孝之前社長が9月に急逝後、キリンHDの磯崎功典社長が兼務していた。
堀口氏に託されるのは、キリンビールの収益改善。縮小が続くビール市場だが、コロナ禍が追い打ちをかけ特に業務用が大打撃を受けた。堀口氏は、キリンビバレッジで低採算商品を見直す一方、「午後の紅茶」「生茶」や健康ニーズに応える独自素材プラズマ乳酸菌を使った「iMUSE」ブランドに注力する〝選択と集中〟を徹底。2020年12月期の事業利益率は8.6%となり、社長に就任した16年と比較し7.1ポイント改善した。
発表同日に都内で開いた会見で磯崎氏は、「持続的成長のために利益を生み続けなくてはいけない。厳しい環境下だが、新たな収益構造改革に取り組んでもらう」と堀口氏の手腕に期待した。次期社長には数名の候補者がいたが、生前布施氏が堀口氏を推していたことも決め手となった。
堀口氏は「大変重たいバトンを渡された」と心境を明かした。布施氏といえば社内外で慕われ、あまりに急な訃報に多くの人が涙した。堀口氏は14年に小岩井乳業の社長に就いたが、前任だったのが布施氏。その際「従業員が前を向く会社にしてほしい。頼んだぞ」と声を掛けられた。「今回、その言葉を聞けないのは残念だが、布施氏のお客様、従業員を大切にする姿勢は踏襲したい」と決意を新たにした。
まずは「一番搾り」「本麒麟」など主力品による成長戦略を継続するとともに、クラフトビール「スプリングバレー」、家庭用ビールサーバー「ホームタップ」など高付加価値提案も加速させる。健康訴求も必須だとし、糖質ゼロなどの機能性だけでなく、語らい飲み合うコミュニケーションツールとして〝精神的な健康〟も模索する。
また吉村氏は、長らくキリンHDで健康戦略を担当しており、グループが成長の柱に据えるヘルスケア事業を支えてきた。キリンビバレッジでも「iMUSE」を活用した免疫領域へのアプローチ、さらに自動販売機事業にもメスを入れ、利益体質の企業作りを進める考えを示した。
堀口英樹氏(ほりぐち・ひでき)=1962年生。59歳。85年慶大商卒。同年キリンビール入社。13年小岩井乳業常務。14年社長。16年キリンビバレッジ社長。
吉村透留氏(よしむら・とおる)=1964年生。57歳。88年東大農卒。同年キリンビール入社。18年キリンHD執行役員。19年常務執行役員。
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