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第23回「安藤百福賞」大賞に京大・森教授/食創会

投稿日:2019年3月14日

ノーベル賞への期待も高まる

日清食品の創業者、安藤スポーツ・食文化振興財団の創設者である安藤百福氏の提唱により1996年に設立された「食創会~新しい食品の創造・開発を奨める会~」(小泉純一郎会長)は、食科学の振興ならびに新しい食品の創造開発に貢献する独創的な研究者、開発者、ベンチャー起業家を表彰する「2018年度 第23回安藤百福賞」を選出。大賞には京都大学大学院理学研究科教授の森和俊氏を選出し、3月12日に東京・ホテルニューオータニで受賞記念記者会見と表彰式、記念貢献会を開催した。

安藤百福賞において通算10件目、2年連続の大賞(賞金1000万円)に選ばれたのは、森教授が研究を進める「小胞体ストレス応答の仕組みと意義の解明」。同研究では細胞内の小器官である小胞体で、構造異常タンパク質の蓄積を感知し、修復や分解によって細胞の機能を正常に保つ反応である「小胞体ストレス応答」の仕組みと意義を解明した。

細胞内では生命活動に必要なタンパク質合成が常に行われ、この過程において小胞体の中でタンパク質が正常に機能するよう立体構造の形成が進む。正常な立体構造が形成されたタンパク質は小胞体から目的地に向かうが、構造異常がおきた不良品は小胞体内に残り細胞に悪影響を与える。この状態を「小胞体ストレス」と呼ぶ。

小胞体ストレスは多くの疾患と関連することが判明してきたが、森教授は不良品タンパク質の存在を感知し、その情報を伝達してタンパク質の合成を中止したり、不良品の修復に取り組んだり、修復できないものは廃棄するなどの「小胞体ストレス応答」という細胞の機能を正常化する仕組みが小胞体にあることを明らかにした。

この小胞体ストレス応答が、糖尿病やガン等の疾患予防に貢献するものとして、世界中から高い評価を集めており、健康寿命延伸につながる食品の開発に応用されることが期待されている。

この他、安藤百福賞では優秀賞(賞金200万円)3件、発明発見奨励賞(100万円)1件を選出し同日表彰した。各賞は次の通り。
優秀賞=カリフォルニア工科大学助教授岡勇輝氏「水の摂取欲求と充足を支配する神経基盤」▽アサヒグループホールディングスグループ食の安全研究所長鈴木康司氏、アサヒビール名古屋工場品質管理部長飯島和丸氏、同社酒類技術研究所主任研究員浅野静氏「日本が世界に誇る生ビール、その製造における微生物品質保証技術の開発」▽大学共同利用機関法人自然科学研究機構生理学研究所教授箕越靖彦氏「代謝調節分子AMPKによる摂食量と炭水化物嗜好性制御機構の研究」。
発明発見奨励賞=マリンナノファイバー代表取締役社長・鳥取大学大学院工学研究科教授伊福伸介氏「カニ殻由来の新素材『キチンナノファイバー』を製造するベンチャーの起業とその機能を活用した食品原料としての展開」

表彰式・記念講演会の前に行われた会見で、森氏は同研究との出会いから今後の可能性について言及。高校までは生物嫌いだった同氏が京都大学時代に分子生物学と出会う。さらに分子生物学を学ぶため、30歳で退路を断って米国に渡る。その時に「小胞体ストレス応答」というテーマに出会う。それから30年間の研究を経て今回の受賞に至った。森氏は「食分野での研究はこれから。しかし応用は十分可能」と今後の食品産業への応用についても期待。

公益財団法人安藤スポーツ・食文化振興財団の安藤宏基理事長は「ノーベル賞候補にも名前が挙がっている方。今後の活躍に大いに期待したい」と語った。

なお、表彰式では安藤理事長、小泉会長に加え、来賓挨拶として吉川貴盛農林水産大臣、柴山昌彦文部科学大臣が来賓挨拶。さらに東洋大学食環境科学部学部長、食環境科学科教授・農学博士の林清審査委員長による選考経過の説明。小泉会長による各受賞者への表彰状と副賞贈呈。森氏の記念講演会がそれぞれ行われた。

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