令和5年度カツオフォーラムin日本橋
日本カツオ学会と高知カツオ県民会議は共同で「令和5年度カツオフォーラムin日本橋」を11月16日に東京・日本橋で開催。100人を超える関係者が参加した。
このカツオフォーラムは、2011年1月に設立された日本カツオ学会(会長:川島秀一)の活動を広く伝える目的で行われており、今年は鰹節の原点ともいわれる東京・日本橋で、「鰹節から学ぶSDGs」をテーマに開催され、専門家4人が登壇した。
渋谷カツオ食堂の永松真依氏は「手削りする鰹節の魅力」と題し、実際に鰹節を使った料理を消費者に直接提供する立場として、削り実演を含めてかつお節愛を全力で伝えた。「だしを極めて健康生活」をテーマに講演したのは、だしの伝道師でもあるマルトモ土居幹治専務。東京・日本橋の老舗、にんべん髙津伊兵衛社長は「鰹節の持続可能性・SDGs」と題して講演。枕崎水産工業協同組合の西村協代表理事組合長は「SDGsとカツオ資源の有効活用・カツオを通じた国際連携」をテーマに掲げた。
ファシリテータ―に高知カツオ県民会議会長代理、日本カツオ学会副会長、高知大学理事・副学長の受田浩之氏、4人の講師を迎えてのパネルディスカッションでは「鰹節から学ぶSDGs」をテーマに、それぞれの立場から意見交換。
受田氏はカツオ・鰹節が持つDHAやEPA、アンセリン、セロトニンといった魅力的な成分の中で、アミノ酸由来の環状ジペプチド(DKP)の生理活性に着目した。DKPにはセロトニンの再取込阻害を活性する、学習意欲改善効果があるとし、鰹節のおいしさを高める一因(仮説)と指摘。そのDKP含有量が鰹節の製造工程のひとつ・培乾にあると考え、工程が多い本枯鰹節に含有量の多さを確認している。
さらに風邪をひいたときのかちゅ~湯や、枕崎での茶節など、滋養強壮、抗疲労効果が確認されているカツオのアンセリン。受田氏は地元・高知で1年間にわたり135本のカツオでアンセリンの含有量を分析したところ、100g当たりの可食部で1年を通じて250~260㎎が含まれ、秋口と春先、初ガツオと戻りガツオの頃に含有量が増えることを確認した。その時期はカツオの回遊距離が伸びることで発生する疲労を、アンセリンが緩衝作用としての役割を果たしている可能性があり、実際にヒトにおける眼精疲労抑制効果の検証も行われた。受田氏は「まだまだ健康増進作用がある」と期待を寄せた。
また、鰹節の持つ本質的な価値や消費者の受け止め、資源問題、巻き網と一本釣りの漁法、MSC認証など、様々な角度からパネリストと考えを共有。その上で、最終的に漁獲量を安定していくためのシナリオをイラストで示し、消費者の理解不足を問題視した。受田氏は「魚類の一つ、カツオを残していくこと。おそらくSDGsそのもの」とディスカッションをまとめた。
WEB先行記事