食のマーケティングカンパニーを進化
国分グループ本社は3月3日に本社で会見(オンライン同時配信)し、2020年度決算(12月期)ならびに第11次長期経営計画ビジョンを発表した。コロナ禍での厳しい経営環境下で策定された新長計では、新たなビジョンを掲げる。
第10次長期経営計画の最終年となった昨年は、グループ売上高1兆8179億2700万円(前年比97.7%)、営業利益80億7000万円(107.0%)、経常利益102億2300万円(101.5%)、親会社株主に帰属する当期純利益57億8500円(182.7%)の減収増益で着地。長計で掲げた売上高2兆円、経常利益180億円は未達で終わった。
売り上げ面では食品が1兆1849億8400万円(100.8%)と前年水準を確保したが、酒類が業務用・フードサービス部門の落ち込みが響き5736億3200万円(92.8%)。その他も893億1000万円(91.4%)の減収となり、売上総利益は0.3%減の1191億6500万円。一方、物流費(543億円)の3.1%上昇や一部業態での物量低下による配送効率悪化を企業努力で吸収し、販管費は総額0.8%減の1110億9500万円と削減に成功、増益につなげた。
部門別売上高は次の通り。食品部門では、加工食品7468億1800万円(99.1%)、冷凍・チルド3949億6700万円(105.4%)、菓子431億9800万円(91.1%)。なお冷凍・チルドでは、過去5年で約575億円にも上る大型物流投資を実施してきた成果もあり、冷凍食品(約1964億円)が14.1%増と好調も、チルド(約1716億円)は2.4%減。アイス(約269億円)は前年並みだった。酒類部門では、酒類3064億3600万円(97.0%)、ビール1405億4900万円(79.7%)、ビアテイスト1266億4600万円(100.6%)。酒類ではリキュール・スピリッツ他は伸長したが、清酒、焼酎、ワイン類、ウイスキー類が前年割れ。
業態別売上高では、主力のSM(構成比40.0%)が4.9%増の7397億4300万円、ドラッグストア(同8.4%)も10.1%増の1544億600万円と大幅に伸びた。GMS(同7.2%)も0.4%増の1330億7800万円ながら、CVS(同9.5%)が11.7%減の1762億1200万円と苦戦。その他、一般・業務用酒販店(同4.5%)は36.8%減、外食ユーザー(同4.0%)は10.6%減、百貨店(同1.4%)は2.6%減。卸売(同17.0%)も3.9%減と前年を下回った。
また、エリア・カテゴリーカンパニー別では国分関信越と国分フードクリエイトが増収。経常利益では国分北海道と国分西日本、国分フードクリエイト(赤字)を除く4社が増益に貢献した。
初年度経常125億円/20年度業績は減収増益
第11次長計初年度となる21年度は、昨年9月に掲げた「SDGsステートメント」に基づくSDGsの取り組みとDX対応を計画に落とし込み、経常利益125億円の達成を掲げた。第11次長計策定について國分晃社長は「コロナに対応した戦略」と強調。「食のマーケティングカンパニー」として、食に関わるあらゆる事業者や生活者の真のニーズを主体的に捉え、社内外の人々と融合した「共創圏」を構築・発展させ、食の価値創造ナンバーワン企業を目指すビジョンを示した。
「共創圏」とは、川上から川下までのバリューチェーンの中で仕入先・販売先にとどまらず、生産者や物流会社などの事業者、行政、生活者と、従来の取引・取り組みの枠を超えた連携、〝新たな食の価値・事業創造を目指すネットワーク〟を展開する。
そして価値創造目標として、顧客満足度ナンバーワン、コト売り比率を経常利益の30〜50%に高める。共創圏の規模は、本社と各カンパニーを第1階層、その他グループ企業を第2階層、そして提携・協力関係にあるパートナー企業を第3・第4階層と位置づけ、第3階層の売上高で1兆円増、パートナー企業数は第4階層までで100社増加を目指す。さらには従業員の「仕事における幸福度」の向上も戦略骨子に含まれる。
長計ビジョン達成に向けての戦略には12の柱を設定。①業界リーダーポジションの維持・発展②STPと融合の推進による国分共創圏づくり③卸売本業の進化④コト売りによる収益基盤の再構築⑤デジタル化の推進⑥物流資源のフル活用による「物流力強化」「物流事業拡大」⑦海外事業基盤の確立・拡大⑧AC・CCの競争力強化⑨市場環境変化に適応する人材の開発と働きがいのある職場環境⑩目標・予算のPDCA強化⑪盤石な業務オペレーションづくり⑫国分SDGsの明確化・実行。
戦略領域としては、販路でドラッグストア、メーカー、EC/宅配、フードサービス、中食。カテゴリーは低温、フレッシュ・デリカ・ヘルスケア・サステナブル商品。事業では物流、製造卸、海外産品調達・販売、海外展開支援、ITサービス、マーケティングを設定。モノ売り、コト売りを組み合わせた利益の底上げ、顧客ニーズへの対応、新たなカテゴリーの発掘・開発を進める。
そのための新体制としてサプライチェーン統括部、マーケティング・商品統括部、営業戦略統括部の3つを1月に新設。そして、国分フードクリエイトのマーケティング機能を統合。4月には国分ロジスティクスと日本デリカ運輸の統合、7月には国分フードクリエイト東北・関信越・中部・西日本を各エリアカンパニーへ統合を予定。常温と低温を再び融合させる体制へと準備が進む。
その他、マレーシアでは4温度帯対応の物流センターを開設し低温加工食品のコールドチェーン物流機能に対応。スタートアップ企業からアイデアを募る「国分アクセラレーター2020」のエントリー締め切りが6月に迫り既に100を超える案件が集まっている。myProduct社、ROMS社、ヨシムラ・フード・ホールディングス、オイシックス・ラ・大地グループのFuture Food Fund社などと、新たな取り組みを始めている。
2021年3月8日付