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長谷川理恵「アレルギーには正しい情報を」/マイランEPD

投稿日:2021年2月22日

アナフィラキシー啓発オンラインセミナー

長谷川理恵と今井孝成教授によるトークセッション

2月20日は「アレルギーの日」。
また、2月17〜23日は「アレルギー週間」で、国民病といわれるアレルギーについて正しい情報を提供し、より多くの人に理解してもらおうと全国各地では講習会やイベントなどが行われている。

製薬会社のマイランEPDでは、今春より小学校や幼稚園・保育園に通う子どもを持つ保護者および教育関係者などを対象にした、「アナフィラキシー啓発オンラインセミナー」を2月19日に開催。
昭和大学医学部小児科講座の今井孝成教授による食物アレルギーとアナフィラキシーに関する基調講演と、食品アレルギー疾患の8歳男児の母親でもあるモデルの長谷川理恵さんとのトークセッションが行われた。

食物アレルギーやアナフィラキシー症状、新型コロナウイルスとの関係性などについて、専門家による最新の知見や体験にもとづいた情報を、詳しく紹介する。

■今井孝成教授による最新情報「食物アレルギー患者は増えている」

 

 

食物アレルギーは、ガイドラインなどでは「食物によって引き起こされる免疫学的機序を介して生体にとって不利益な症状が惹起される現象」と定義されている。つまり、食物が原因によるアレルギー反応のことで、これにより人間にとってイヤな症状が発せられる…というもの。

年齢的には0-1歳で発症することが多く、年齢がたつにつれて発症率が低下する傾向にある。小学校入学までに全体の約8割、9-10歳までに約9割が発症するといわれている。しかし、ここ数年来では5%が成人での発症であり、専門家が注目しているところ。
東京都による3歳児検診時での調査では年々発症率が上昇しており、3歳児の約15%が食物アレルギーを発症している。
また、文部科学省による大規模調査の10年比較では、ぜん息やアトピー性皮膚炎が微増・微減であるのに対して食物アレルギーは約7割増加しており、あわせてアナフィラキシー発症数も約2.5倍に増加している。

発症原因となる食物は卵・牛乳・小麦で6割以上を占めるが、増加傾向にあめのがクルミとカシューナッツ。果物ではキウイとバナナが多い。
しかし、実は発症年齢で大きく異なっており、発症時に最も多いのが0歳児では卵が5割超なのに対し、7歳以降は果物や甲殻類が約2割となっている。
症状別では、じんましんなどの皮膚症状が最も多く8割超を占める。ショック症状とはつまり「アナフィラキシー症状」のことで、発症率は1割程度だが「命にかかわる」危険な状態となることが多い。

「アナフィラキシー」とは、アレルギー原因物質を食べたり触れたりしてから2時間以内に発症するアレルギー反応。皮膚・呼吸器・消火器など“全身”に強い症状が即自的に現れ、血圧低下などにより意識障害を引き起こすこともある。
国内では年間5000〜6000人がアナフィラキシーを発生していると推測されるが、原因物質は食物が圧倒的に多く、食後30分程度で発症する。
しかし、アナフィラキシー発症から救急搬送され病院に到着するまで約40分かかっているのが現実でもある。

アナフィラキシーを含むアレルギー重篤症状の特効薬とされているのが「アドレナリン」注射。
現在では、医師からの処方により「アドレナリン自己注射薬」を患者が所持・投薬することができ、危機的状況を回避するのに役立っている。
なお、小学校や幼稚園・保育園には文部科学省・厚生労働省により「アナフィラキシーガイドライン」が配布されているが、国内では現時点でアドレナリン注射薬を常備している学校・園はない。

新型コロナウイルスによる影響も、食物アレルギー患者にとっては深刻だ。
食物アレルギー患者の小学生・園児の保護者100人による調査結果では、54%が不便・不安を感じていた。最も多かったのは「感染するリスク」だがこれにより病院等での診療機会も減少し、39%が「受診しなくなった」「受診頻度が減った」としている。アナフィラキシー発症時などに「救急搬送や治療してもらえない」への不安もあった。
電話・ビデオ通話による「オンライン診療」については、行政がコロナ禍において普及を図っているところだが、「利用したい」は48%にとどまった。利用しない理由の約40%は「医師の指示が伝わるか」「思ったことが伝えられるか」など、医師との意思疎通を不安視するコミュニケーションに関してだった。

受診控えが増えている昨今、テレビやインターネット・SNSなどで情報収集している人も多い。
しかし、医師や専門家以外からの情報は必ずしも正確とは限らず、今井教授は「コロナ禍で不安が大きいからこそ、情報は信頼できるところから得て欲しい」と締めくくった。

マイランEPD社製のアドレナリン自己注射薬「エピペン」

■長谷川理恵&今井教授トークセッション「新型コロナ恐れすぎないで」

現在8歳の息子が1歳のときに卵と牛乳アレルギーを発症し、毎日活発に行動しているものの「コロナ禍で不安はある」と長谷川さん。
小学校もオンライン授業で外遊びが減ったものの、なるべくいつも通りの生活パターンを続けていることで「大きくストレスを感じているようには見えない」とのこと。
今井教授も臨床医師の立場から、ストレスを抱えている子どもが増えているのは事実だが「大人が思っているほどにはステイホームを負担に感じていないようだ」と付け加えた。

病院等での受診にはやはり不安が大きく、そもそもケガや病気をしないよう、家族全員の食事や体調管理など「極力気を付けている」という。
これに対して今井教授は、新型コロナについて「正しく恐れて欲しい」と主張する。適切な予防策により感染リスクは下がるので、「必要な受診まで控えないで」と訴えた。

学校・園への心配事は、新型コロナ問題が優先され「アレルギーやアナフィラキシーを適切に対応してもらえないのでは?」という不安。「誤食させてしまわないか」も不安材料。
しかし今井教授は、新型コロナに感染しても「アレルギー症状を著しく悪化することはない」とみている。気管支症状であるぜん息は特に心配されていたが、世界中からの報告により「重篤化しない」と認識している。

オンライン診療について長谷川さんは「画期的、便利、利用してみたい」。理由は、新型コロナの感染リスク低減だけでなく、手間や時間も削減できるから。
診断の正確性や薬剤処方など課題もあり検証も必要だが、行政が普及を図ろうとしていることもあり、今井教授は「今後は若い世代のスタンダードになる」とみている。

長谷川さんはこれまでの経験から、最も必要で重要なこととして「もしもの時に備え、正しい知識や情報を得るための手段の確保」を挙げた。

マイランEPD公式サイト
https://www.mylan.co.jp/ja-jp/company
今井教授監修の情報サイト「アナフィラキシーってなあに?.jp」
https://allergy72.jp/

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