度数16%のビールとは?
サントリービールは日本初の炭酸水で作る自由なビール「ビアボール」を新発売。炭酸水で割ることを製品上で訴求する日本初のビールとなる。7月5日から飲食店約700店舗で試験販売し、10月4日から業務用500ml瓶(862円)、11月15日から家庭用334ml瓶(698円)の本格発売に踏み切る。
17年連続で前年割れを続けているビール市場の復権を目指し、味わいだけでなく〝楽しさ〟を提案できる、新たなビール製品を確立する。多岐にわたる経歴を持つメンバーが集まり、今年4月に結成されたイノベーション部の総力を結集した。現在3.2兆円とされる酒類市場の内、ビールは1.4兆円と依然大規模であることから新提案による活性化を図る。
「ビアボール」はアルコール度数16%のビールで、炭酸水などで割って飲用する。家庭用は1瓶で8杯程度、業務用は1杯当たり100円とリーズナブル。MZ(ミレニアル+Z)世代と呼ばれる20~40歳代をターゲットに、若者のビール離れに歯止めをかける。この世代は物質的な満足感より、シェア・共感・共有などコト消費を楽しむ層。MZ世代のビールへの印象は「ゆっくり楽しめない」「決まった味わいで自由度が低い」など。こうした声に対し「自分好みにつくる自由なビール」を提案する。
飲用方法はウイスキーにおけるハイボールと同様だ。グラスに氷、炭酸水、ビアボールを入れて軽くステアするだけ。ただビールでこの飲み方を実現するには製造における革新的な工夫が必要だった。飲用者が自分好みにカスタマイズして楽しめるには、どのような濃さでも冷たさやおいしさが続くことが前提。16%という高いアルコール度数だが、おいしさ追求のためビール酵母の発酵方法は、自然発酵を選択し発酵時の温度管理を徹底した。この結果、新たに「サントリー式〝酵母イキイキ製法〟」を確立。
6月21日には東西でメディア説明会を開催。東京会場では西田英一郎社長が「ウイスキーなど他のアルコールで行ってきたソーダ割の延長ではない」と強調。あくまでMZ世代が飲みたくなる楽しめるビールであることを訴求した。炭酸割の試飲では同社が推奨するバランスの取れたアルコール濃度4%、濃いめでコクのある8%、ライトなテイストの2%はレモン入りで、さらにロックでの飲み比べを行った。飲食店ではハイボールのように、店舗側が炭酸割メニューとして提供する場合と客が炭酸割セットを注文し、自身で割って飲むケースを想定。いずれにも対応する。
初年度売上高(大瓶換算)は23億円(13万箱)、23年度は120億円(70万箱)、24年度は170億円(100万箱)を掲げる。業務用で先行発売するが、最終的には家庭用が主要チャネルと見込む。まずはテスト販売で支持率の高い飲み方など、需要度を見極め業務用での展開を経て家庭用の製造数量を決定する。当面の生産は群馬・利根川工場が担う。
新商品の早期浸透に向けポップアップストアも出店し体験を通じて価値を伝える。6月21日から大阪の心斎橋BIGSTEPを皮切りに、東京ではミカン下北、b8ta Tokyo―Shibuyaに開設し約1カ月間展開する。ミカン下北では8月末までビアボール横丁の展開も予定。
将来的にはRTD化も視野。ハイボールなど現在のソーダ割アルコールを飲用する層からビールへのシフトがどこまで進むか未知数だが、今後の商品開発に「楽しみ」は不可欠と言えそうだ。
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