本業を徹底強化
ビール大手4社が2022年度事業方針を発表。酒税法改正による値下げでビール需要が高まったことから、久しぶりに各社とも、本来の主力カテゴリー強化に軸足を置く。今後2度にわたりさらなる税改正が予定されることに加え、家飲みの定着もフォローの風。今年はビールのⅤ字回復元年となりそうだ。一方で健康志向の高まりから、ノンアルコール・微アルコール市場拡大に向けた動きも活発化している。
大手4社は、昨年販売数量を伸ばしたビール商品のさらなる伸長を見込んでいる。強気の計画は20年から始まった酒税法改正による。ビールが減税で値下げとなったため、発泡酒や新ジャンルからの流入が顕著に。23年、26年にもビールは減税・値下げとなるため、各社ともここぞとばかり、主力商品であるビールの拡販に乗り出したのだ。
長きにわたり右肩下がりを続けてきたビール売り上げは、今年からⅤ字回復となる予想だが、決して楽観視できる状態ではない。業務用は各社とも大幅な売り上げ増を見込むが、19年比の7割程度、企業によっては5割程度の回復率という。また増税となった発泡酒、新ジャンルは今後一層売りづらくなる。アサヒビール・塩澤賢一社長が「30年から酒類需要は急落する見通し。今こそ家庭用ビールに力を入れる時」と強調した通り、ビール販売への注力は、むしろ崖っぷちのⅤ字回復策といえる。
アサヒビールは「スーパードライ」の最大の特徴「辛口」を見直しパッケージも刷新。2~3月にかけて順次切り替える。発売以来、初のフルリニューアルで、CMは過去最高規模の3.5万GRPを予定。ミュージアムカーや飛行船などによる宣伝活動も行う。話題となった生ジョッキ缶の販売は、前年比5倍となる1290万箱の生産体制で臨む。またマルエフの愛称で知られる「アサヒ生ビール」にも注力し、念願だったビール二本柱政策に乗り出す。飲み方の多様性に対応したスマートドリンキングでは〝ビールを飲まない・飲めない〟約4千万人に向けて、デジタルコミュニケーションやデータマーケティングを行う。
キリンビールは好調の「一番搾り」「同 糖質ゼロ」に引き続き注力。さらにクラフトビール「SPRING VALLEY豊潤〈496〉」もリニューアルして市場浸透を図る。市場活性化に貢献した会員制生ビールサービス「ホームタップ」でもクラフトビールの品ぞろえを強化。さらに新ジャンルは「本麒麟」をリニューアルし、前年比1割増を狙う。
サントリービールは、家庭用「ザ・プレミアム・モルツ(プレモル)」ブランドは前年並みを維持する一方で、1月25日から刷新する「パーフェクトサントリービール(PSB)」は1.5倍を見込み、ビール合計110%を目指す。昨年の発売以降、好調を続けるPSBを今年は業務用チャネルにも拡販する。年間1千店舗への導入計画だが、西田英一郎社長は「計画以上の導入を目指しており、これには自信がある」と強調した。主力のプレモルは、その最高峰である「マスターズドリーム〈無濾過〉」を4月5日から新発売。価値提案の幅を広げる。
サッポロビールは23年の酒税改正をにらみ「サッポロ生ビール黒ラベル」を、2月製造分から順次リニューアル。7年連続で成長を続ける主力商品を、今年は127.8%計画とさらなる拡大を図る。「ヱビス」は、期間限定品による多様な味わいと製造の背景にある物語を提案する限定品とのラインアップで、昨年は102%と順調に推移。今年は新マーケティングコミュニケーションをキックオフし、26年には家庭用・業務用で熱狂的なファンを黒ラベルで100万人、ヱビスでは16万人の獲得を目指している。
2022年1月17日付