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進む?キャッシュレス化/量販店

投稿日:2019年11月4日

上期は天候不順で大苦戦

活況を呈する店舗。このまま年末商戦に突き進みたいがー

大苦戦の夏商戦、消費増税によるメリット・デメリット、軽減税率による混乱、大型台風の襲来―。ひとつ問題を乗り越えると、またひとつ新たな問題がやってくる。今年の小売業界は外部からの刺激が相次ぎ、その対応に翻弄された印象だ。10月に入りキャッシュレス化の推進で還元合戦が強まっているが、国の政策とは異なる展開も散見される。

量販店各社の第2四半期決算が発表され、改めて今夏の天候不順によるダメージの深刻度が浮き彫りとなった。

特に衣料品の構成比が大きい企業であるほど事態は深刻。この点では季節商材が不振でも、その他の通年商材の販売強化でカバーできる食品業界はまだ恵まれているといえるかもしれない。飲料や麺つゆメーカーにしても、7-8月の苦戦から回復基調にあり、小売業も同様だ。

各社大苦戦の上期を終えての感想は、ライフコーポレーションの独り勝ちといったところ。もちろんライフにとっても厳しい夏商戦で増収増益の好決算ながら、既存店は上期としては12期ぶりの前年割れだった。ただ、天候不順によるマイナスを同社は「現場力」の向上で凌いだところに期待を感じさせる。ある店舗では競合するSM店舗に対抗するべく、店舗従業員がメーカー工場を訪問。競争力を高める開発商品について商談するなど現場への権限委譲が、従業員のモチベーションを高めている。

一方、厳しい結果に終わったマックスバリュ西日本は、前期末決算時点で営業時間の短縮や時間帯別に売り場を編集し特に夕方需要を獲得、また生鮮・デリカの強化などを取り組み項目に挙げていた。結果的に営業時間の短縮が裏目に出たというが、下期の取り組みも営業時間を戻したこと以外はおおむね期末の発表と同様だ。つまり施策が間違っているわけではなく、本部で決定した方針が現場に十分伝わっていないのだ。今後も続く天候不順。季節商材など売れるはずの商品が売れるべき時期に売れない。こうした状況下で明暗を分けるのは、本部と現場がいかに連携できているか否かであろう。

厳しい夏商戦を終えて量販店が見据えていたのは、消費増税によるプラスとマイナスである。家電などは8月から特需が見られ、9月中旬を過ぎると酒類や日雑品も動いた。結果的には各社が「駆け込み特需も反動減も想定以上」と異口同音に漏らすとおり、これもまた読み切れなかった。軽減税率による消費者の混乱が、そのまま9月後半から10月前半の売上に反映された格好。

一難去ってまた…一方で光明も

今回の増税はさまざまな副産物をもたらした。軽減税率とキャッシュレス・ポイントバックを組み合わせた国の政策は税率を多様化させた。さらに年商1000億円程度、資本金1億円前後の中堅SMがこぞって5000万円以下に減資し中小企業となる現象も相次ぎ、これが大手小売の販促攻勢を呼び込んだ。国はこうした実態を考慮した新たな政策を打ち出した方が良い。これでは大手対中堅の還元セールが熾烈化するだけで、商店街などで長く親しまれてきた本当の中小店舗は、市場撤退を余儀なくされてしまう。同じことは外食市場にもいえそうだ。

大手量販店は10月に入り販促攻勢を強めている。キャッシュレス決済の恩恵を大々的に告知し、自社カードとスマホ決済によるポイント還元を訴求。今のところスマホで決済する人は、多くがペイペイを利用しているようで、ライフはペイペイ、ラインペイ、メルペイを採用。一方で和歌山のオークワのように、ペイ8社全てを利用できるようにした企業もある。

ただ消費者がどこまでキャッシュレス決済に乗り気かどうかは地域や年代により格差がある。政府、企業とも導入後の説明こそ重要となるだろう。

中小企業支援策は来年6月までだが、ペイ各社やクレジットカード会社は、せっかく掴んだ顧客とキャッシュレス本格化の好機を逃しはしないだろう。来年7月以降もキャッシュレスキャンペーンを、カード会社らが打ち出す可能性はある。

増税による浮沈をキャッシュレス訴求で乗り越えようと意気込んだところで、大型台風が待ったをかけた。全国各地で甚大な被害が見られ、伴って備蓄買いにより小売店頭から商品がなくなる事態となった。

19号上陸時、イオンは首都圏や東海、東北の店舗で営業時間を短縮。一方、循環バスを被災地の避難所数カ所とイオンモールなどの店舗間を走らせるサービスも実施。店舗では携帯電話の充電サービスを行ったほか、「車を非難させたい」の要望に応え、立体駐車場を地域住民の自動車避難所として提供。自然災害への対策はいぜん多くの課題を残してはいるが、出来ることも着実に増えてきているという印象はある。

今年の商戦は暖冬苦戦で幕を開け、4月ごろから回復に転じ、さらに改元による想定以上の祝賀ムードの高まりもあった。夏以降は前述のとおりだが、悪いことだけではなく、ラグビーワールドカップの開催と日本チームの健闘など、消費マインドを刺激する要素は確かにあった。また10月22日に行われた即位礼正殿の儀においても、災害の後だけに特別なイベントに癒しや期待を求めた人々も多かったのではないか。10日のパレードも盛り上がりを見せると予想される。インバウンド需要もいぜん伸長しており、食品界としてはこのムードをもって年末商戦に突入したいところだ。

2019年11月4日付

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