桜美林大学、東京都健康長寿医療センター、明治の共同研究グループ
明治は11月6日、明治ホールディングス京橋ビルで「人生100年時代に考える認知症予防について〜カマンベールチーズの新たな可能性」をテーマにメディアセミナーを開催。世界初のヒト試験において、カマンベールチーズ摂取による認知症予防の可能性を示唆した研究成果を発表した。
桜美林大学、東京都健康長寿医療センターと、明治の共同研究グループは、カマンベールチーズの摂取が記憶・学習などの認知機能との関連が報告されているBDNF(脳由来神経栄養因子)を上昇させることをヒト介入試験で確認した。これまでも、カマンベールチーズ摂取による認知症予防効果を示唆する基礎的な研究成果は報告されていたが、今回の研究は世界で初めてヒトを対象とした試験でカマンベールチーズと認知症との関係を証明した。
金憲経東京都健康長寿医療センター研究所研究部長が概要を説明。東京都に居住する70歳以上の高齢女性689人のうち、軽度認知障害と判断された71人を対象に、白カビ発酵チーズ(カマンベールチーズ)とカビ発酵していないプロセスチーズ(対照チーズ)の摂取によるBDNFへの影響を評価する試験を実施した。
対象者を無作為に2群に分け、1つの群には市販の6Pカマンベールチーズを1日2ピース、対照群には市販の6Pプロセスチーズを1日2ピース、それぞれ3カ月間摂取し血中BDNF濃度を測定。その後、3カ月間の時間経過を経て、摂取する食品を群間で入れ替え同様の試験を行った。
その結果、カマンベールチーズ摂取時には、対照チーズ摂取時と比較して、血中BDNF濃度の変化が有意に高い値が示された。
カマンベールチーズが白カビで発酵する過程で産生する成分には、神経の炎症を制御する因子の1つである「オレアミド」(オレイン酸アミド)と、抗炎症作用をもつ成分「デヒドロエルゴステロール」などが特定されており、この2つが脳内で働く免疫細胞「ミクログリア」が引き起こす神経の炎症を改善する。
特に今回の試験に使用したカマンベールチーズに含まれるオレアミドはプロセスチーズの10倍以上だったことから、研究グループは「試験結果の裏付けになると考えられる」とコメント。
鈴木隆雄桜美林大学大学院教授は「ヒトを対象としたエビデンスの高い試験で、食品によるBDNF濃度上昇が報告された例はこれが初めてだと思う」と述べ、食品と認知機能の関連を解明する後続研究の活性化にも期待を込めた。
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