ローランド・ベルガー会長遠藤氏、東京大学名誉教授伊藤氏が講演
日清製粉(山田貴夫社長)は、経営者層を対象とした「日清製粉 秋季経営セミナー」を11月19日、大手町サンケイプラザホールで開催。ローランド・ベルガー会長の遠藤功氏、東京大学名誉教授・学習院大学国際社会科学部教授の伊藤元重氏が講師を務めた。
第1部では欧州最大の戦略コンサルティング会社の日本法人会長を務める遠藤氏が「現場論~『非凡な現場』をつくる論理と実践~」をテーマに講演。これからの時代は、Volatility(不安定)、Uncertainty(不確実)、Complexity(複雑)、Ambiguity(曖昧模糊)という〝VUCA〟の時代。乱気流が常態化している中での経営が今後10年、20年続くとし、その難しい時代を生き残る唯一の方法は、自ら〝行動〟することが重要になると指摘した。ありたい姿・あるべき姿を目指し、未来を考えてダイナミックに進める〝Backcastingの経営〟がポイントになると話した。
日本企業に求められることは①ビジョン②競争戦略③オペレーション(現場)の3つを挙げ、中でも「現場力」の重要性を強調。日通・パナソニックロジスティクス、赤城乳業の事例を紹介し、経営で重要な「創造」と「代謝」の循環が企業の活力を生み出すと語った。特に「代謝」のポイントとして、事業・製品・サービス(コアの問い直し)、業務(最低でも30%は削減可能)、組織(統廃合、大括り化によるスリム化)、人(社員ではなく、経営幹部・管理職)が重要。
成功の方程式は「熱+理+情=利」。遠藤氏は「これから5年ぐらいで勝負がつく」と注意喚起を促し、令和の時代はデジタルとアナログの融合、鳥の目で大局を見ながら、「虫の目がヒントになる」とポイントを語った。
第2部では「日本経済がわかるキーワード」と題し、伊藤氏が講演。
2012年末に発足した安倍政権の成果を例に挙げ日本のマクロ経済を解説。株価、雇用、企業収益、GDPすべての数値で回復、もしくは過去最高を記録する一方で、実感が伴わない、見通しが立たない現状について、〝成熟社会〟における需要と供給のバランスを指摘。この10年、生産性が向上せず、企業は投資をせず、賃上げを控えた〝日本の縮み〟を問題視。伊藤氏は生産性向上には「企業が動くしかない。ピンチをチャンスに変えるべき」と指摘した。
一方、この6~7年労働力は増加した。シニア、女性、外国人が支えてきた。女性の労働参加率は10年前に最低水準だったものが、すでに米国を上回った。ただ「今後5年は不透明」と不安視。外国人労働者の増加はそれほど期待できず、15歳~64歳の生産労働人口減少も続く。今後の対応として、伊藤氏は「賃金上昇しかない」と断言。
また、労働力は条件の良い企業に移り変わることは自然の流れ。好条件の企業では人手不足への悩みはないというが、経験値を高めた人材の流出も避けられない。伊藤氏は「この流れについていける企業といけない企業。淘汰されていく」と厳しい見方を示した。
そのために積極的なITを活用したソリューション、業務の外部委託も推奨。さらに企業は積極的な投資が必要であり、①人口②デジタル革命・技術革新③サステナビリティ④アジアの4つが企業戦略のカギを握るとし、「日本企業はアジアを内需化できるかがポイント。キーワードは〝デジタルトランスフォーメーション〟今までのビジネスを変えること」と話した。
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