東大との共同研究で実現
日清食品ホールディングスと東京大学生産技術研究所の竹内昌治教授の研究グループは、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の未来社会創造事業に採択された研究で、牛肉由来の筋細胞を用いてサイコロステーキ状のウシ筋組織を作製することに世界で初めて成功した。
世界的な人口増加を背景に、将来的な食肉消費量の増加が予想される。一方で家畜の生産には大きな環境負荷がかかり、飼料や土地の不足が大きな問題となっている。そこで食肉代替として注目を集めているのが「培養肉」。動物の個体からではなく、細胞を体外で組織培養することで得られる肉のことで、地球環境への負荷が小さく厳密な衛生管理が可能となる利点がある。
近年、培養肉は〝ミンチ肉〟の作製として世界中で研究が進められ、日清食品と東京大学の研究グループは、肉本来の食感を持つステーキ肉を培養肉で実現する目標を掲げ、筋組織の立体構造を人工的に作製する研究に取り組み、3月24日に日本農芸化学会2019年度大会で発表を行った。
肉本来の食感は筋肉に含まれる筋組織の立体構造から生まれる。これを体外で人工的に作製するには筋細胞を増やすだけでなく、筋細胞を成熟させる必要がある。しかし生体内環境外で筋細胞を成熟させるためには必要な栄養を行きわたらせ、細胞を適切に配置する技術が必要となる。
同研究では培養過程でウシ筋細胞にビタミンCを与えることで、細胞の成熟が促進することを確認。さらに厚みのある培養肉を得るために、ウシの筋細胞を従来の平面的な培養ではなく、コラーゲンゲルの中で立体的に培養。結果、筋組織に特有の縞状構造(サルコメア)を持つ、細長い筋組織の作製に成功した。そして筋細胞の集合体を積層し特殊な方法で培養、世界初のサイコロステーキ状(1.0cm×0.8cm×0.7cm)の大型立体筋組織の作製に成功。培養ステーキ肉の実用化に向けて大きな一歩となった。
2019年4月1日付