凍眠ブランドの拡販をけん引
伊藤忠食品が業務提携するテクニカンと共同開発した「凍眠市場」ブランドが、さらなる鮮度提案に乗り出している。テクニカンが開発したリキッドフリーザー方式凍結機・凍眠は、零下まで冷やしたアルコール液の中に製品を入れ凍結させる液体急速凍結機。冷気ではなく液体による凍結が、凍結時間の短縮と氷結晶の極小化を実現。食品の細胞が傷つきにくくドリップの発生も抑制、解凍しても限りなく凍結前の風味や食感を再現することが出来る。
これまで凍眠市場の商品展開は、産直ギフトなどを中心に約100品種を展開。23年度は産直冷凍ギフトで1万セットを販売し、24年度は1.5万セットを計画。今年からは伊藤忠食品が得意とする酒類分野において、蔵元でしか味わえなかったおいしさを、家庭でも楽しめる凍結酒の販売に注力する。7月に神戸で開催した秋の展示会で、通常の冷凍食品とは異なる価値を改めて訴求。続いて同月下旬には、大阪本社でメディア向け凍結酒説明会も実施した。
日本酒市場の縮小傾向は全国に約1600件存在する蔵元共通の悩み。凍眠凍結酒は火入れをしていない生酒を、作り立ての鮮度そのままに消費者へ届けることが可能で、日本酒の新たな価値を提供するとともに、生産者のサポートも行える取組み。
●知ってほしい生酒のおいしさ
基本的に日本酒造りは火入れと呼ばれる加熱処理を、製造工程において2度行う。蔵元が作り上げた日本酒を、一番おいしいタイミングで瓶詰しても、火入れをしていなければ酒の中に残っている酵母はアルコール発酵を続けている。つまり瓶詰後も変化が続き、消費者の手元に届くころには飲み頃を過ぎていることもある。よく「日本酒は生きている」といわれるゆえんである。だから生酒の中には蔵元の直売所でしか買えない商品も多い。とはいえ通常の冷凍技術では膨張し、瓶が破裂してしまう。
こうした課題をクリアし、蔵元でしか味わえないおいしさを家庭で楽しめることを実現したのが凍眠市場の凍結酒なのだ。
●今年は1万本の凍結酒を販売
現在、生酒の凍結は同社の大正ギフトセンター(大阪市)を拠点に実施。300mlの商品なら1時間当たり約100本を凍結。入荷後、遅くとも3日以内に凍結できる体制が整っている。現状の扱い商品は10銘柄14品(300ml、720ml)で、今後扱い品種を増やしながら24年度は約1万本(300ml換算)の販売を計画する。また、売価が300mlで1100~1600円と通常品の倍程度となるため、180ml製品による売価抑制も検討中。
価値訴求を加速し早期に凍結酒売上で億単位を目指すが、当面は凍眠市場ブランドトータルで5億円の達成を目標としている。
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