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上位企業への集約進む/量販店 24年2月期決算

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決算に見る小売業の行方

2024年2月期の量販店決算は、多くの企業が増収増益となる好決算で着地した。増収は価格改定の影響も大きいが、レジシステムの刷新、デジタルや加工センターの活用などが効率化に貢献しており、生産性の向上は当面期待できそうだ。上位寡占化が進む中、デジタル活用と商品力強化が今後の鍵となる。

価格改定による単価アップが増収に大きく貢献した一方で、小売独自の努力としては、デジタルの活用による作業効率化や新たな販促企画、さらにPB展開の強化や値下げ、増量セールなどの値ごろ提案が挙げられる。

こうした取組みが順調に進んだ企業は過去最高の業績となった。地域格差もあるが、これだけの値上げラッシュにもかかわらず、売上が微増あるいは減収となった企業は、値上げが不十分、または上がった価格の中で、ポイントやアプリクーポンなどを含む新たな販促提案に遅れが見られたケースが多い。

それでも既存店は前年クリアする企業が目立つ。客数、客単価とも前年を超えるところがほとんどで、買上点数のみ各社とも割り込んでいる。この改善も図りたいが、原料高も円安進行も依然として継続基調にある中で、無理に点数アップを目指せば現場は安売りするしかない。このため点数向上には生鮮・デリカや地域商品の強化などの施策は投じるが、例え点数を落としても既存店でクリア出来れば良いと考える企業もある。

上位企業への集約が顕著となっているが、国内小売業界を代表する2大量販店では大きく明暗が分かれた。

イオンは首都圏のSM連合であるU.S.M.Hが好調に推移。今秋にはいなげやの統合を予定しているが、統合効果抜きでも増収増益を見込む。さらに西日本では新生フジが発足、展開エリアの拡大も見込まれる。全国的なSM事業強化の基盤構築が着々と進む。

一方でセブン&アイホールディングスは、国内外のCVS事業こそ順調だが、スーパーストア(SST)事業はイトーヨーカ堂のアパレル撤退(現状の撤退進捗は47%)、店舗縮小もありこれからが正念場。首都圏集中による93店舗への集約は、今期中に実現見込み。こうした構造改革が完了すれば、IPOによるSST企業の自主再建が始まる。同社ではCVSの成長に、SSTの食品ノウハウを生かした2業態の連携強化を強調。今後のSSTの位置付けはCVSのサポート業態という見方も出来る。2月にSIPストアの展開を開始したが、さらなる新業態が登場するのかもしれない。

ローカルエリアでの有力店の多くは、既に大手の傘下に入るか、地域企業同士でアライアンスを形成。500~300億円規模の中小チェーンもいずれは大手流通グループに組み込まれる予想にある。今後生き残るためにはデジタル活用による生産性の向上や販促策、NBレベルのPB確立、加工センターの有効利用、物流効率化などが不可欠で、残念ながら中小規模の小売業が、独自でこうした取組みに投資するのは難しい。

メーカー、卸業にとっては販売先が集約される傾向は好ましいとは言えない。ただ、長年オーバーストアが指摘され、そこへドラッグやDS業態の食品販売が本格化している今、1店舗あたりの販売力や収益の改善は適切なサプライチェーンの確立に不可欠。

今期も新店や既存店の活性、デジタル活用などが進むが、何より小売業が注力するのはPB、留め型の商品開発といえるだろう。同業者や異業種との差別化を図るには、他店では買えないオリジナル商品でヒットを飛ばすことが、集客やブランド価値を上げるのに効果的だ。別稿で各社の商品施策について紹介する。

2024年4月29日付

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