粗利改善も光熱費吸収できず
2023年2月期量販店の第2四半期実績は、小売業以外や海外事業などで好決算を示す企業もあるが、小売事業に関しては、売り上げは前年を維持し粗利改善を果たしても、水道光熱費の高騰などコストアップを吸収できずに減益に陥る企業がほとんど。これは国内需要がコロナ禍前の状態に回復しつつあるCVSも同様だ。値上げラッシュが一層進む下期以降、商品・販売力の強化に活路を見いだせるか。
セブン&アイは海外CVS事業の大幅拡大が継続、イオンは金融事業がけん引するなど、国内小売業の2トップは好決算で上期を終えた。
ただし国内小売業に関して見れば苦戦している。セブン&アイのスーパーストア事業やイオンのGMSおよびSM事業などは、大幅減益や損失に陥っている。これはリージョナル大手なども同様の傾向。各社とも売上高は前年並みを維持、もしくはクリアしており粗利も数ポイント改善しているが、電気代を筆頭に水道光熱費の高騰をカバーできなかった。
販管費の上昇は既存店の改装やシステム導入など、前向きな投資も影響している。また人件費の増加も最低賃金のアップなどへの対応もあるが、多くの企業が現場力を高める将来へ向けた投資を行っている格好。一方で光熱費の高騰が実質的な利益圧迫要因という傾向は当面続く見通し。さらに値上げにより新たな値頃感が定まっておらず、タイムリーな特売が打てていないことも、利益率の向上を難しくしている。
売り上げは展開エリアの違いなどから一様ではないが、19年比では上昇している企業が多い。またローカルエリアを地盤とする企業は、少なくとも上期は一定規模の帰省需要を取り込めた。都心部では昨年の大型出店が奏功し、全体売り上げが向上する企業も見られた。一方で値上げによる単価アップは、顧客の買い控えや来店頻度の減少を招き、下期以降に影響する見通し。
このため下期および通期の減益幅を下方修正する小売業が相次いでいる。大型改装は手控えるとしても、水道光熱費の高騰と川上インフレ、川下デフレの傾向は一層強まる中、メーカー値上げを全て店頭売価に反映できない難しさもある。
PBの価格凍結や値上げしたNB商品の一部を店頭では売価据え置きで販売するなど、価格への対応はそれぞれが取り組んでいる。ただ、この厳しい局面を乗り切るための施策としては、各社とも「商品・販売力の強化」と口をそろえる。
イオンは「トップバリュ」の価格凍結を現状は維持しながらも、同ブランドで有名シェフが監修した「プロのひと品」を強化。既に6200万食、18億円を売り上げており、PB領域の拡大がNBからのスイッチや集客力の向上につながっている。ライフコーポレーションの「ビオラル」もニッチで高単価な自然食品カテゴリーだが認知度を高めており、売れ行きも好調だ。また、和歌山県の最大手・オークワは高質業態「メッサオークワ岩出店」を10月28日にオープン。同社オリジナル商品など価値商材をそろえ、価格ではなく商品力で需要をけん引できるかどうかを実験する。セブン&アイは、もともとNB並みの品質を訴求する「セブンプレミアム」を展開。この強化を継続する一方で、昨年から発売した「ザ・プライス」を今秋に「セブン・ザ・プライス」としてリニューアルし価格志向に対応。需要の二極をPBで確保していく。また、生鮮3品原料は軒並み高騰しているが、各社とも寿司やフライ類などの加工品およびデリカ商材で対応している。
商品価値の向上を図るべく、生産性向上に向けた取り組みも進む。半導体不足により電子棚札への刷新やセルフスキャンが可能なレジへのシフトが進んでいなかった店舗は、今後改善される見通し。加工センターのさらなる活用、部門の垣根を越えたマルチワークが可能な現場環境づくり、AI発注の本格展開などが加速して進む傾向。コロナ禍では1店舗あたり十数人が自宅待機するなど、店を回すことが大命題で、生産性まで取り組めなかった。効率化を背景にした店舗の魅力向上に期待したい。
2022年10月31日付