食関係者の行動実践に期待
世界的課題である栄養不良の改善について国際的に取り組むための第3回会合「東京栄養サミット2021」が、12月7~8日に東京都内の会場と世界中をオンラインで結ぶハイブリッド形式で開催された。参加したのは64の国・地域をはじめとする214超のステークホルダーで、今後の方向を示した「東京栄養宣言」が採択された。
「栄養サミット」は、ロンドンオリンピックを機に初会合が行われたことからオリンピック開催国がホストとなり2013年にロンドン、16年にリオで開催。1年延期された東京会合には主要国だけでなく、途上国や国際機関・民間企業など過去最多の217超のステークホルダーが参加。参加者には同サミット以降の行動計画実行を約束するコミットメント提出が求められ、国内外から330超が発表されている。
同サミットでは、すべての人が適切な健康増進・予防・治療などに関するサービスを支払い可能な費用で受けられる「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)」への統合をはじめ、健康的で持続可能な食料システムの構築、脆弱な状況下における栄養不良対策、データに基づく説明責任、栄養改善のための資金確保といった5テーマを議論。中でも、栄養過多と低栄養による「世界に広がる栄養の二重負荷」に焦点を当て、世界全体での栄養の偏り解消に向けた施策が必要とされた。
12月7日の夜、岸田文雄総理大臣による開会挨拶により、各国の首相・大統領や国際機関代表者らによるハイレベルセッションでの議論がスタート。岸田総理は冒頭に「2030年までに飢餓を終わらせ、食料安全保障および栄養改善を実現するためのSDGsの目標を今ここで思い出しましょう。今こそ私たちの行動が必要です」と呼び掛け、日本から今後3年間で28億㌦(約3000億円)以上支援することを表明した。栄養関連の資金拠出は、ビル&メリンダ・ゲイツ財団からの9億2200万㌦など、過去最高額の約270億㌦が表明された。
一方、外務省をはじめ厚生労働省・農林水産省・文部科学省などでは、各省だけでなく企業・団体主催のサイドイベントが、来年1月までに公式分だけでも120以上開催。サミット当日も主に重点課題に関わるセッションがサイドイベントとして多数行われた。
農水省は、あらゆる国・地域で問題視されている「栄養不良の二重負荷」低減対策などを模索する7つのセッションを実施。これらの結果を踏まえ、持続可能な食料システム構築の実現に向けて4つの重点課題①食料システムの変革②食関係者のイノベーション促進③個人の行動変容促進④途上国・新興国への栄養改善支援―を掲げた。これに伴い食関係者に行動計画表明を求めたところ66者が賛同し、アクションプランを発表している。
最終日夜に発出された「東京栄養宣言」には説明責任の強化や、個々の行動の包括性に期待する旨が盛り込まれ、採択された。次回は24年にフランスで開催される。
2021年12月13日付