予約でいっぱいの店のパスタソース開発秘話語る
2001年の発売から20年を超えるロングセラー。エスビー食品のレトルトパスタソース「予約でいっぱいの店のパスタソース」は、日本におけるイタリアンの第一人者である東京・銀座「ラ・ベットラ」の落合務シェフが監修し、自宅にいながらも予約の取れない人気店の味わいが楽しめるとあって今も高い人気を誇っている。
今年創業100周年を迎えた同社が、最初にパスタソース(混ぜるタイプ)を上市したのが1987年。「まぜるだけのスパゲッティソース」「予約でいっぱいの店のパスタソース」シリーズを中心に現在35アイテムを展開。家庭用製品において1割近い売り上げを販売し、市場で上位シェアに付ける。
そうした同社が初めての試みというスペシャルトークショーを9月5日に、板橋スパイスセンターで開催。登場した落合シェフは、当時としては珍しい有名店監修という商品開発の経緯をエスビー食品マーケティング企画室の眞榮城有里氏とともに振り返った。
目指したのは、「ラ・ベットラ」での落合シェフの味づくりを忠実に再現すること。1990年代後半、テレビ番組「料理の鉄人」が人気を博していた時代だが、食品メーカーが有名な外食店と商品を共同開発するといった事例は稀だった。
スパイス&ハーブのプロでもあるエスビー食品がパスタソースの商品開発を続ける中で、本格的なイタリアンを追求していくとどうしても壁に当たる。そこで日本におけるイタリアンの第一人者である落合シェフの門をたたくこととなる。シェフは「カレーかと思った」と、驚いた当時を振り返り、そしてエスビー食品の社員の熱意に押され話を聞くことにした。シェフがこだわったのは、「店の名前を出すからには、食べた消費者に必ず満足してもらいたい」という思いだった。
エスビー食品の担当者にレシピを伝え、出来上がった味をチェックする作業を繰り返す。大半が閉店後の作業となる。シェフ自身も何度も板橋を直接訪れアドバイスを行った。一回で商品化が決まるものもあれば、最終的に許可できないものもあったそうだ。その作業は現在も続いている。また店名は、シェフが若い頃にイタリアで修業した3年間で好んだ〝メシ屋〟(ベットラ)にちなんだという。
ボロネーゼ、ポモドーロ、ボンゴレの3品からスタートしたシリーズは、新商品「からすみのアーリオ・オーリオ」を含めて現在10種類。累計販売食数は約2億食におよび、高価格帯個食レトルトジャンルで欠かせない存在となっている。シェフは「どんな料理にもアレンジできる。パスタソースだけではもったいない」と語り、裏面のアレンジレシピを指さした。さらに「アイデアを募集したらどうか」とリクエストする場面も。そして「うまい料理は冷めても旨い」と自信を見せた。
今後のシリーズ開発について、落合シェフは「よりおいしくするために、変えていかなければならない」と、味わいの進化を強調した。「前の方がおいしかったと言われるようでは、料理人として進化をしていないことになる」と持論を展開。10月に76歳になる今も腕を磨き続けている。
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