都内で第2回シンポジウム開催
環境省と国立環境研究所は8月2日に都内で、シンポジウム「第2回 民間事業者による気候変動適応促進ワークショップ 気候リスク情報とその活用事例」を共催。食品企業からはキーコーヒー、日清製粉グループ本社が参加し最新の取り組み事例を紹介した。
気候変動の影響は自然災害、農業等のさまざまな分野で現れ始め、今後その影響が増大すると予測されている。昨年12月には気候変動の影響を回避、軽減するために「気候変動適応法」が施行され、国と地方公共団体、民間事業者、そして国民が気候変動への適応に取り組むことが求められている。
シンポジウムは3部構成で開催され、民間事業者による気候リスク情報の活用事例や情報開示に向けた取り組みを紹介。
第1部「民間事業者の適応における最新の動向」では、まず環境省地球環境局総務課気候変動適応室の髙橋一彰室長が、「気候変動適応法及び民間企業向け気候変動適応ガイドについて」を講演。気候変動の対策としては、原因とされる温室効果ガスの排出削減、将来予測される被害の防止・軽減策が挙げられる。「企業に向けては気候リスク管理、適応ビジネスのためのガイドも作り、セミナーも実施する」と語った。
続いて国立環境研究所気候変動適応センターの岡和孝主任研究員は、「国環研における気候変動適応に向けた取組」を講演。気候変動による、ある程度の影響はもはや避けられない状況にあり、「リスク管理、適応ビジネスに加え、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)など民間事業者の取り組みも重要になる」と訴えた。
第2部「気候リスク情報等の活用事例と課題」では、民間事業者3社がそれぞれの事例を説明。キーコーヒーは講演「コーヒーの2050年問題 直営農園における気候変動適応の取り組み」について川股一雄副社長が登壇。コーヒー業界では気候変動の影響で、50年にはアラビカ種コーヒー豆の収穫量が現在の半分になるとの試算がある。
同社は国際的な研究機関「ワールド コーヒー リサーチ」と協業し、16年からインドネシア・トラジャの直営農園でIMLVT(国際品種栽培試験)を開始。気候変動、病害虫に強く、豊かな味わいのコーヒー豆の開発を進めている。
人材、予算等の課題を克服し、30年までに新たなコーヒー栽培方法を確立することで生産者を支援。「将来は東ティモールやニューギニアなど近隣諸国にも活動を広げ、コーヒーの未来を切り開きたい」と展望した。
日清製粉グループ本社は技術本部環境管理室の高田みのり主査が「気候変動適応への取組み」を紹介。同社は小麦粉を主力商品として、加工食品メーカーへの供給を主力事業とする。気候変動では災害も多く発生するが、その影響を最小限に抑え供給を確保する取り組みに力を入れている。
日清製粉鶴見工場では災害時の電力喪失に備えた自家発電設備の装備、小麦粉搬送船が接岸する岸壁や地盤の補強。水リスクにも配慮し国内外の調達地域や製造拠点の干ばつ、洪水、水質のチェックも徹底している。
東京地下鉄は鉄道本部安全・技術部の小暮敏昭次長が「東京メトロの水害対策」を講演。さらに国立環境研究所岡研究員、キーコーヒー川股副社長、日清製粉グループ本社高田主査、東京地下鉄小暮次長に、環境省地球環境局総務課気候変動適応室秋山奈々子室長補佐らを加えたパネルディスカッションも行った。
第3部のテーマは「TCFDシナリオ分析の取組事例と課題」。環境省地球環境局地球温暖化対策課岸雅明課長補佐が「TCFDシナリオ分析支援事業について」、東急不動産ホールディングスコーポレートコミュニケーション部サステナビリティ推進室の松本恵室長が「気候変動とTCFD」、商船三井新規・環境事業推進部の島裕子副部長が「TCFD対応の深度化に向けて」をそれぞれ講演した。
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