にごり酢で広がる発酵の可能性

依田晃社長と「にごり酢」開発を担当した加藤有紀子さん(中)と塚本やよいさん(右)

完売が続く
「免疫ケア にごり酢」
キユーピーグループで、マヨネーズの主原料である食酢を担うのがキユーピー醸造(東京都調布市)だ。同社はグループ内向けの原料供給にとどまらず、発酵技術を基盤とした商品開発力やBtoBビジネスを強みとしており、近年は酢酸菌そのものの価値に着目した取り組みを進めている。その中核拠点が、茨城県猿島郡五霞町にある五霞工場である。
五霞工場の敷地面積は約9000坪、従業員数は約140人。生産構成は食酢類が約6割を占め、そのうちおよそ半分はグループ向けに供給されている。年間生産量は約5万6000kl。生産体制は、五霞工場を中心に、滋賀工場が西日本向けの供給拠点、日光工場が補完的拠点として深部発酵のみを担う役割分担となっており、表面発酵と深部発酵の両方式を併せ持つのは五霞工場のみで、技術・規模の両面でグループ最大の拠点に位置付けられる。
食酢は、穀物や果実を原料に、糖化、アルコール発酵、酢酸発酵を経て製造される。酢酸発酵には、表面発酵と深部発酵の2方式があり、前者は香りに厚みが出る一方、後者は高酸度の酢を効率よく安定生産できるのが特徴だ。キユーピー醸造は1969年、国産で初めて深部発酵装置を開発し、日本の食酢産業における量産化と品質安定の礎を築いた。
国内の食酢生産量は全国食酢協会中央会によると約43万kl。1人当たりの年間摂取量は約3.4ℓで、1日換算では約9mlにとどまる。一方、推奨摂取量は1日15mlとされ、ドレッシングや加工食品を通じ日常的な摂取が定着している。
こうした中で、同社が近年注力しているのが「にごり酢」だ。一般的な醸造酢はろ過工程で酢酸菌を取り除くが、にごり酢は酢酸菌を含んだまま製品化する点が特徴で、発酵の担い手そのものを価値として捉える発想に基づく。
この取り組みをけん引してきたのが、2020年2月に社長に就任した依田晃氏である。依田社長は付加価値型の醸造酢に強いこだわりを持ち、「免疫ケア にごり酢」をはじめとする商品を成長領域に位置付けてきた。その姿勢を象徴するのが、栃木県宇都宮市のグランメゾン「オトワレストラン」オーナーシェフ監修の赤・白ワインビネガー「芳醇 Riche Fermenter」で、創業60周年記念商品として2022年に発売した。
機能性表示食品「免疫ケア にごり酢」は、開発に約6年を要し、キユーピーグループのスタートアップ案件第1号として位置付けられた。昨年1月に発売され、当初3カ月で5000本を計画していたが、わずか1カ月で完売するなど話題を呼んだ。

深部発酵製法を説明する久野修司課長
一方で、酢酸菌を含む製品特性から生産量には限りがあり、現時点で販路拡大を急ぐ考えはない。現在はAmazonで月50本に限定して販売し、1月からは自社通販サイト「Qummy」での取り扱いも予定するなど、まずは認知拡大を優先している。
なお、数量は限られるものの一部では業務用にも対応。20㍑のバックインボックスタイプで、飲料用途のほか中食・総菜向け原料として提供している。
キユーピー醸造は、グループを支える原料メーカーであると同時に、発酵技術を核に新たな価値創出に挑む存在だ。1969年の深部発酵装置開発に始まる技術の蓄積と、依田社長の下で進む高付加価値戦略は、五霞工場を起点に食酢の可能性を今も広げ続けている。

キユーピー醸造 五霞工場関係者の皆さん

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