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SDGs観点から日本食を世界に発信/Jミルク

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第52回メディアミルクセミナー

日本食の環境負荷比較(セミナー資料より)

神奈川県立保健福祉大学 中村丁次学長
(同大学提供)

一般社団法人Jミルクは、「日本人の栄養とSDGs~未来に向けた『ジャパン・ニュートリション』~」と題する第52回メディアミルクセミナーを、3月23日にオンライン開催した。

今年9月に国連事務総長主催の「国連食料システムサミット2021」を米国ニューヨークで開催し、安全・高栄養な食料へのアクセス確保や、持続可能な食料消費への転換行動を促す方策などについて議論を交わすことが予定されている。
こうした動きも含め、SDGsの観点で「栄養」について考える機運が世界中で急速に高まっている。

メディアミルクセミナーで今回講師を務めたのは、神奈川県立保健福祉大学の中村丁次学長。日本栄養士会の会長も務める、栄養学の国内第一人者。

日本栄養士会は昨年3月、新型コロナウイルスによる免疫系への対策として「すべての栄養素を過不足なく摂取することが必要」と、世界に先駆けて発信した。
先行き未知の感染症に対し、免疫系を整え体調を維持することは必要である。しかし昨今、一部の栄養素のみを摂取することで「免疫力アップ」などとうたわれることがあるが、栄養学的には必ずしも正しいとは言えない。
免疫系に必要とされる栄養素はタンパク質・n3系脂肪酸・食物繊維・ビタミン各種・葉酸など20種類あり、そのどれもが過不足するとバランスが崩れる原因に。
中村学長は「重要なことは、すべての栄養素を等しく摂取すること」と主張した。

また、世界中の専門家からの報告によると、新型コロナは高齢者や低栄養者での発症率が高く、肥満者は悪化リスクが2倍に高まる。
イギリスでは感染入院者の72%が肥満または肥満傾向にあり、1743万人の分析結果では、肥満は3番目に多い死亡要因となっている。
肥満が要因となるメカニズムもおおむね解明されている。内臓脂肪細胞から炎症性サイトカイン(タンパク質)が大量に産出され、新型コロナにより炎症が拡大することで免疫機能が暴走する「サイトカインストーム」が起きることによる。

SDGsでは栄養による貢献として、「貧困削減」「飢餓ゼロ」「すべての人に健康と福祉を」などが挙げられており、これらも背景に「人間に肉食は必要か?」といった議論や研究もある。
また、良好な栄養状態が学習能力を高め、免疫システムを強化して死亡率を減少させることも専門家においては周知の事実ではあるが、世界中には未だ栄養不良の人々が多く存在している。

一方の日本では、糖尿病患者は増加しているが、糖尿病予備軍の人の数は2007年をピークに減少傾向にあり、要因は「健康指導などの効果」とされている。
食事摂取基準に沿った栄養指導により40~60代はメタボ予防が進められ、その効果の表れであるといえる。しかし、70代以降もそのままの栄養基準でいる人が多く、タンパク質摂取不足により痩せすぎ・筋力低下の傾向にある。ただし「人による」ため、中村学長は「60~70代でギアチェンジするための個別指導が必要である」との考えを示した。

SDGsにおける牛乳・乳製品の役割については、必須アミノ酸が多く含まれ、流通機構が整えば安価で手軽に入手できることから「発展途上国には特に有効」と考えられる。
先進諸国においても若年女子・高齢者・傷病者には新たな低栄養が出現しつつあり、「健康的な食事と環境負荷が少ない食事とのバランスをどのように創造するか」が課題である。SDGsの観点では発展途上国と同様に、先進諸国においても牛乳・乳製品の摂取が有効である。
特に日本においては、栄養豊富な欧米食を導入しつつ日本の自然や文化と融合させた「日本独特の栄養」を具現化させた経験から、栄養・環境の両面に貢献できる存在。

中村学長が掲げるジャパン・ニュートリションとは、「伝統的食文化を大切にしながらも、医学・栄養学・農学などの科学的根拠に基づいた栄養改善により、国民全体が持続可能な食事にした日本の栄養」のことで、世界に向けて発信すべきことと位置付けている。

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