記憶機能支援「βラクトリン」
キリンホールディングスは3月2日に開催したオンライン会見で、認知機能の維持をサポートする物質「βラクトリン」の発見と臨床結果、および同成分配合の新商品発売を発表した。
グループの小岩井乳業が東京大学との共同研究により、カマンベールチーズが認知機能を低下させる状態を改善することを解明。その後、協和キリンと連携して関与成分を発見し、最も有効性が高い物質をβラクトリンと命名した。乳由来のホエイプロテインから記憶力維持を助ける物質を発見したのは世界初で、他のチーズや乳製品にも含まれていることが確認されている。
しかし、1日分の必要量を乳製品から摂取するには、100gのカマンベールでは40個程度が必要。そのため発酵技術を生かし、スプーン1杯で有効量を取れる素材としてβラクトリンを見いだした。認知機能をつかさどる前頭皮質や海馬が活動するためには神経伝達物質のドーパミンが不可欠であるが、加齢とともに減少する。βラクトリンは直接神経細胞に働きかけることでドーパミンの量を増やし、これにより認知機能が活性化する。
健常中高齢者が12週間摂取する2回の臨床試験では、45~65歳と50~75歳のグループに、記憶機能や注意機能への効果が認められた。今後は、早期対策が最も必要である軽度認知機能障害(MCI)を対象にした臨床試験や、脳内作用のメカニズム解明などを行っていくことで、科学的に効果を証明するエビデンスをさらに取得していく。
βラクトリン配合の商品は、小岩井乳業「βラクトリンミルク」(200ml、170円)など、グループから3品が4~5月に発売される。
また、雪印メグミルクからは「記憶ケアヨーグルト βラクトリン」(90g、120円)を6月8日に新発売。乳由来の成分であり「親和性が高く市場へのメッセージも増す」との考えから、キリングループの研究事業に賛同。健康ニーズが高く習慣性のあるヨーグルトを共同開発した。
脳機能領域の国内市場は2027年に20年比109%の580億円が見込まれ、超高齢社会の日本では潜在ニーズが増大すると予想されている。
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