大阪イギー、小泉商店、タコたこ
大阪市内のたこ焼き屋調査の第一段階として、北部に位置する淀川区で店舗調査と取材を行った。交通の要衝としての機能と下町のにぎわい、住宅地が混在する同区では、かつて数多く見られたたこ焼き店が減少する一方、個性や役割の異なる店舗が地域に根を張って営業を続けている。調査を進める中で、たこ焼き文化の現在地が浮かび上がってきた。
大阪市北部に位置する淀川区は、淀川水系に沿って発展してきた「川の町」と、新大阪駅の開業以降以降、鉄道網の集積による「交通の要衝」という二つの顔を併せ持つエリアだ。全国から人が行き交う大阪の玄関口としての役割を担う一方、十三を中心に大阪らしい下町文化も色濃く残る。たこ焼き屋の立地も駅前型、商店街型、住宅地密着型と多様だが、調査・取材を通じて共通して聞かれたのは「店が減った」という声だった。

ミシュラン掲載経験を持つ名店「大阪イギー」
創業14年の「大阪イギー」は、ミシュラン掲載経験を持ち、近くアメリカ進出を控える新進気鋭の店舗だ。国産だしを効かせたふわとろ食感のタコ焼きに加え、牛すじ入りの「スジ焼き」を組み合わせた〝半々〟メニューなど、独自性を前面に打ち出す。選び抜いた素材と焼きの技術により、同店ならではの味を確立している。周辺では、かつて約6軒あったたこ焼き店のうち4軒が閉店。残る店舗も高齢化が進み、「ここ10年で明らかに減ってきた」との実感を示す。

創業60年以上の老舗「小泉商店」
一方、十三で60年以上暖簾を守る「小泉商店」は、昭和の空気感を色濃く残した〝街の拠り所〟ともいえる存在だ。現在は2代目の女性店主が50年以上にわたり鉄板に向かい続けている。4個100円という今では考えにくい価格で、舟皿に盛ったたこ焼きを駄菓子のように気軽に味わえるのが持ち味だ。かつて商店街の半径数十メートル内には5~6軒のたこ焼き店が軒を連ねていたが、現在は同店を残すのみ。市場や個店が立ち並び、活気にあふれていた街並みも、マンションの建設が進み大きく姿を変えた。「家にくっついている今の形だからやれているが、家賃を払って店を構えるのは厳しいと思う」。店主は、個人たこ焼き店を取り巻く現実を静かに語る。

長年親しまれてきた「タコたこ」
創業42年の「タコたこ」は、東三国駅からほど近い駅前型のたこ焼き屋として長年親しまれてきた。大ぶりのたことしょうがを効かせたたこ焼きを看板に、しその風味を生かした「しそ焼き」といったオリジナルメニューも展開する。新大阪、梅田に近く人の往来が多い一方、生活圏としての側面も併せ持つ東三国エリアで、40年前に訪れた客が今も足を運ぶ。時代を越えた人のつながりが、この店を支え続けている。
今回の調査で浮かび上がったのは、淀川区では店舗数の減少が進む一方で、方向性の異なるたこ焼き屋がそれぞれの立ち位置を確立しながら共存しているという実態だ。海外展開を見据える新興店、街の変化を見続けてきた老舗、そして時を重ねても人の記憶に残り続ける店。それぞれが、移り変わる街と向き合いながら営業を続けている。
たこ焼き屋は、大阪の街が歩んできた歴史や人の動きを映す存在でもある。北部3区調査の先行事例として、淀川区の現場はその一端を示している。
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