THE FOOD WEEKLY

限定記事(寄稿)

“美味しさ”へのこだわり 丹沢滋黒軍鶏をコンセプト・ストーリー化し、製品・メディア戦略で高付加価値を実現した事例(㈱山路フードシステム)/タナベコンサルティング

投稿日:2022年10月24日

成功のポイント

1.美味しさへのこだわりをコンセプトに落とし込み、山路ファームの世界観を確立
2.コンセプトへの共感度が高い顧客層をターゲットに、高質な商品・パッケージを開発
3.戦略広報の手法を基軸にWeb・メディア戦略を展開し、著名グルメサイト・TVへの露出を獲得

最高の食材を求めてたどり着いた“6次産業化”

山路グループは、神奈川県を中心に給食・弁当事業や外食事業を手掛けるこだわりの食を武器にした地域密着型企業である。しかし、良い食材を安定的に確保する上で、時期やルートによってどうしても食材の品質にばらつきが出てしまうことが課題であった。そうした中、食材開拓先として訪ねたある農家との出会いが転機となり、そこで出された新鮮な鶏肉の味に感動した経験が、最高の食材を得るために「自ら生産者になる」という3次産業から1次産業へ展開する6次産業化への決断につながった。

美味しさへのこだわりをコンセプトにし、山路ファームの世界観を作りこむ

山路グループは、オリジナルブランド地鶏・丹沢滋黒軍鶏を育成するため山路ファームを立ち上げる。丹沢滋黒軍鶏は、軍鶏らしい肉のしなやかな弾力性と赤身のような後を引く旨みが最大の特長である。山路ファームでは、最高の品質・味を実現するため、「鶏ファースト」の考え方により、鶏舎・エサ・水・育て方にこだわり、鶏の健康を第一に考えた育成方法を取っている。このこだわりを「あたりまえの育て方。ほんものの鶏の味。」というコンセプトに落とし込み、山路ファームの世界観を表現するための判断基軸にしている。明確なコンセプトを設定することで、ブランドの一貫性を実現しているのだ。

コンセプトへの共感度が高い顧客層をターゲットに、高質な商品・パッケージを開発

コンセプトへの共感度は顧客層によって大きく異なる。山路ファームでは「滋黒アーバン」というマーケティングキーワードを設定し、こだわりの地鶏の味を最大限に引き出すプロの料理人によるメニューを、手軽な調理方法で簡単に味わえる冷凍商品を開発した。フレンチレストランなどを比較的頻度高く利用する都会の富裕層であれば、丹沢滋黒軍鶏のこだわりに共感を得られるという仮説を立てたのである。そのターゲットが手にしやすい洗練されたパッケージにすることで、贈答品にも満足できる品質とした。

美味しさへのこだわりを“ストーリー化“する

どれだけこだわりがあったとしても、理解されなければ付加価値にはつながらない。“食べ物は半分頭で食べている”と言われるが、食品の味は事前情報のインプットにより大きく印象が異なるのが事実である。そのため、丹沢滋黒軍鶏においても、美味しさへのこだわり・コンセプト・世界観をストーリー化し、それを伝えるためのリーフレット・Webサイト制作に注力している。どれだけこだわりを込めても“伝わらなければ意味がない”のである。

戦略広報の手法を基軸にWeb・メディア戦略を展開

今回は“戦略広報”を基軸とした。商品・サービスが出来上がってから広報戦略を考えるという従来の後追いの広報活動に対し、商品企画や企業戦略の根幹にまで広報が携わることで、客観的・効果的かつ抜本的な広報戦略を打つことができ、結果としてコンセプトに忠実な唯一無二のブランディングを行うことができる。山路ファームも基本的に広報担当者がすべての工程にかかわることで、ブレることのない一貫したWeb・メディア戦略を展開している。

リアル/Webの一貫したメッセージングにより、著名グルメサイト・TVへの露出を獲得

山路ファームでは、丹沢滋黒軍鶏の基幹店舗として神奈川県宮ケ瀬湖畔園地内に「Café WILD CHICKEN」を運営している。ここは丹沢滋黒軍鶏の料理を手軽に味わえる店舗であり、園内を訪れる年間約200万人の観光客に対してアプローチするためのリアル発信基地となっている。また、昨今の定番手法であるSocial Media(SNS)を利用した顧客との相互コミュニケーションを行うことで、ブランドへの共感性を高めている。さらに、高質スーパーをターゲットに、積極的にイベント出店することで、高質な食材を求める顧客との関係性を積極的に構築している。

これらと同時に、こだわりストーリーを多面的にするためにOwned Mediaである自社Webサイトでは、印象的な写真・文章により育成・調理・商品化の特長を余すことなく伝えている。また、雑誌などのEarned Mediaへの露出による認知獲得のため、プレスリリースを積極的に発信することで、自社Webへの流入を促進している。

この総合的なメディア戦略の結果として、著名グルメサイトからの引き合いを獲得し、そのサイトからの依頼により、キー局TV番組での露出を短期間で実現している。

こだわりのコンセプト・ストーリー化による高付加価値・高単価の実現

上記の戦略・取組みにより、山路ファームの丹沢滋黒軍鶏は、神奈川県内を中心に品質にこだわる外食店舗への卸売りや、より美味しいものを求める顧客のリアル店舗/EC店舗での購入により、高付加価値・高単価での事業展開を実現できている。この一番の要因としては、“こだわりをコンセプト・ストーリー化”している点である。この事例から学べることは、自社のこだわりをわかりやすく魅力的なコンセプトとストーリーに展開することが、事業展開を優位に進めるための重要な要素であるということである。これは多くの企業においても実践できる事例であるため、是非参考にしていただきたい。

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株式会社タナベコンサルティング
ストラテジー&ドメイン東京本部 本部長代理
井上 裕介 / Inoue Yusuke

大型リゾート・旅館にてホテル・スキー場・飲食店舗を運営し、新規企画開発・人材育成・業務改善・収益改革などに従事後、当社へ入社。現場経験を生かした戦略設計や中期ビジョン策定、新規事業戦略策定、SDGs策定支援など幅広く活躍している。

タナベコンサルティング
https://www.tanabekeiei.co.jp/

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