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有馬で〝こけら(杮)寿司〟復活へ/有馬温泉×Mizkan

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赤酢「三ッ判山吹」を使用

有馬・御所坊から「こけら寿司」発信

一般社団法人の有馬温泉観光協会と有馬商店会は、大阪発祥の「こけら(杮)寿司」を、兵庫県の名物とするプロジェクトを進めている。高まるインバウンド需要の獲得が狙いで、11月15日には老舗旅館・御所坊でメディア向け説明会も開催した。

日本最古の温泉として知られる有馬温泉(兵庫県神戸市)でも、訪日外国人は増加の一途。その需要を取り込むために、着目したのが日本を代表する食文化・寿司メニューだった。現代の日本人にとって、寿司といえば握り寿司。ただ、外国人の中には生魚を敬遠する人も少なくない。そこで焼き魚を使用する箱寿司の中でも希少性の高い杮寿司を、有馬の新しい名物とする案が浮上。大阪発祥の寿司ながら、今の大阪には伝承されていない。これが淡路島の一部地域ではベラを使った箱寿司として生き残っていることが判明。同じ兵庫県の有馬で復活させるプロジェクトが発足した。

大阪には押し寿司・バッテラ、京都なら鯖寿司、奈良は柿の葉寿司、和歌山は目張り寿司、滋賀はフナ寿司と、近畿の各府県には郷土寿司の文化があるが兵庫にはない。兵庫にもご当地寿司を―の想いがある。

時を同じくして、Mizkanは外食店やスーパーバックヤード向けに杮寿司の提案を始めていた。大阪万博などを控え今後さらに高まる予想のインバウンド需要に向けて、大阪の食文化を発信していくためだ。

有馬温泉は杮寿司を「こけらの屋根のごとく、最上部にそぼろ、おぼろを敷き詰めるか、こけら板のように最上部をスライスしたタネを重ねて並べた寿司(後略)」と定義したが、唯一使用することにした調味料が同社の赤酢「三ッ判山吹」。寿司づくりに好適とされる旨み高い純酒粕酢で、有馬温泉、杮寿司、山吹が、それぞれ江戸中期に隆盛を極めた点でつながり、有馬温泉×Mizkanのコラボがスタート。

杮寿司は有馬温泉唯一の寿司店・有馬禅寿司と老舗旅館・御所坊が取り組む。有馬禅寿司は今回、昆布締めした太刀魚とカマス、赤酢のシャリなどによる2種類の杮寿司を提案し、1本2500円で販売する。

御所坊は、有馬の山椒や明石の鯛などご当地品を使用したメニューを考案。さらに系列のハンバーガーショップ・サボールでも杮寿司のコンセプトを踏襲し、神戸ビーフに山吹と赤ワインでソースを作った「こけらバーガー」(4000円)を提案。これには有馬の芸子さんが一役買う。お座敷に上がった際、宿泊客に土産物としてお勧めするという。

さらにプロジェクトに呼応したのが、大阪樟蔭女子大学学芸学部と梅花女子大学食文化学部の女子大生6人。大学で食について学ぶ彼女らは、杮寿司をいかに見せるかを考え、「アーティスティックなこけら寿司」を考案、説明会当日に披露した。

多くの人が参加して好発進を切った「こけら寿司」プロジェクト。将来は兵庫五国(淡路、但馬、丹波、摂津、播磨)の各地でご当地杮寿司を発信する夢がある。その一番手として有馬温泉(摂津)が狼煙を上げた。その行方やいかに―。

【杮寿司】「杮」は材木を削るときに発生する細片の意で、飯に混ぜ込む魚の切り身をそのように見立てたこと。また、こけら葺きの屋根のように幾重にも重ねた様が似ていることなどを語源とする説が有力。1600年代にはすでに登場していたが、1800年代に流行し江戸にまで伝わったとされる。

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